死んだ。死んでない。
「見えるさ、にしてもお前さん、やけに冷静だな。」
「・・・俺は死んでいるのか?」
「いや違う。魂を束縛しているだけだ。」
目の前には、ワイシャツが真っ赤に染まった自分の死体。
そして喋れるという状況。
彼は未だ自分が死んでいないということを理解していなかった。
彼から黒く細い糸のようなものがたれている。
「まあ肉体は死んでいくはずだがな。殺して悪かったよ。」
「いくつか聞かせてくれ」
「もちろんだ」
少し呼吸をしてから
「一つ、俺を殺した理由。2つ、お前は一体何だ。3つ、これが一番重要だ。お前の名前を教えてくれ。」
大男は目がキョトンとしてから笑みを殺して大笑いした。
「ククク・・・笑うのを我慢するのも久しぶりだなあ。そうだな。それは大切だ。3つめから答えるぜい。俺の名はバーサーク・イディオン、バディで良いぜ。」
そしてまた大男は話し始めた。
「一つ目、殺した理由は仲間を作ることと敵を減らすことの両方だ」
意味がわからない、という顔で宙に浮かびながら彼は大男を見める。
「まあ、矛盾してるがな。俺の能力は
「うーん、そうなのか。」
「ま、魔力のない兄ちゃんには分からない話かもな。そして、ここからが本題だが、死んで魂だけになりゃ、強制的で絶対的な仲間が作れる。」
「・・・どういうことなんだ?」
「つまり、死んでしまえば裏切る必要のない最強の仲間が作れるということだ。
俺に協力すれば肉体を蘇生するやつを探し出して、魂を元に戻してやるっていう取引だ。」
「蘇生できる保証は?」
「一番はお互いを信じるっつーことだ。二番目の質問の答えだが、俺は魔道士だ。ファイターじゃねえ。今は騙せるようにこうゆう身なりだがな。そして俺の
1.死体になる前、つまり蘇生出来るまで脳死や劣化速度などを魂を意図的に身体に残すことで死体になることを急激に遅らせる
2.魔法を扱う奴らなら魂の種類からどんな魔法か感覚で分かる
3.魔力がないやつの魂を行き来させる。これは魔力がないやつで、俺が殺そうとした人間に限るがな。そして、おそらく先程のやり取りで蘇生術に関する魔力を保持している人間の目星はついた。」
「なあ、この作戦、あんたが他の奴らに殺されたら無意味だろ。」
「だからこそさ、今が死体もどきを作れる最高のチャンスで最大の賭けだったんだよ。協力してくれるならお前は生き返られる。そして魂ってやつは物理演算法則の外だ。まあ結界は辛いが、他の信じられねえやつよりは即席で信じられる最強の仲間だ。すぐに信じられるってところが良いんだよ。
そして、殺されずにこうやって縛られておけば、他の奴らは何より油断するだろ。」
「・・・バディ。」
「おう、なんだ。」
「バディって見た目の割にはよく喋るんだな。」
「・・・うーん、お前さんは見た目通りに落ち着いているな。」
「そうかもしれない。まあ、仲間になるよりほかないってのはわかったよ」
「そういうこった」
2人はそれとなく話しながら向こうのメンツを視る。
「お前さん、名前は?」
「ナルミヤ シュン、だ。」
「わかった、ナルミヤ、じゃあ先ずはあの中の会話を聞いてきてくれないか?おそらく俺はしばらく縛られている。あとはお前さんの好きにしていい」
彼は頷くと、ゆっくり向こう側の会話を聞きに向かった。
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