そこにいるんだろ

「僕の名前はクリークス。1魔王を倒した勇者だ」


騒然とする。


頭を傾ける者、開いた口が塞がらなくなった者、冷静にその者の顔を伺う者、反応は様々である。



「やっぱ皆んな知らないかー。魔王を倒したクリークスって言えば、通用すると思ったんだけどなあ。がっかりだあ。」



その言葉に反応する黒い背格好の牧師



「まて、お前、今って言ったな?どういう意味だ」



「え、そんなこともわからないのかい?拍子抜けだなあ。」


彼は肩をすくめる。


「ここに集まっている人たち、同じ世界の人間ではないでしょ?」


全員があたりを見渡す。



「そう言いたいのは分かる、しかしだな。なぜそういい切れる?」

顎に手をやり牧師は質問する。



「おそらく・・・主が纏っている魔力もしくは呪い、からじゃろうよ・・・。全員異質な風がながれちょるようじゃが・・・」

藤色の帯を緩やかに締めた、美しい絹に花の模様を散りばめた衣を纏った女が言う。


「ご名答!姉さん只者じゃないね。」

クリークスはにこやかに言った。


「後は、僕の世界なんかは黒い牧師は異教徒でも清教徒でもない。そもそも黒い服を身に纏うと牧師にはなれないんだよ。魔術が抜けるから。それなのにお兄さんからは只ならぬ怪しい風が流れているよね。」


「・・・ッッ」

何かを言い出したい牧師を尻目に会話を続ける。



「たぶんなんだけれど、皆それぞれ魔力か魔術がある。僕には感じるだけ、みんなの承知の通り大した魔力はない。そこでおっ死んでるお兄さんも、魔力ほとんどないよね。」


死体は何もしゃべらない。



「・・・しかし、この死体は妙だ。異臭がしない。まるで物のようだ。」

狐のような長い耳を頭の上から生やした、者が死体の近くまで行き、匂いを嗅ぐようにしゃべり始める。

体系とはアンバランスな、はだけた胸が大きく揺れる。



「たぶんね、部屋の結界のせいだわさ」

少し男勝りな、何故か片手にじゃがいもを持った女がしゃべる。

しかも喋り終えたら食べている。



「はっはっはー、先ずは自己紹介でもしようぜ!!」

縛られていた大柄な男が喋り始めた。



危険を感じたか、白い装束を被った小柄な女は右手に力を込める。



「あ、そのおっちゃん要注意だよ。魔力はないにせよ、最初狂ったフリして魔力のない僕を殺そうとしたでしょ?」



全員が驚く。



「ガハハハ、気づかれていたか、なら仕方ねえ。魔力が無いものからならやれると思ってな。」



「しかも、失敗してもそれを殺せる手はずだった」

制服、という概念を全員が持ち合わせているのかは定かではないが、それは日本の女子高生の格好をした女が2を指差しながら声を出す。

ポニーテールで、服の上から輪郭が浮かび上がる程の胸と、ほどほどに短いスカート、腰には短剣をぶら下げて。




「ま、そいういうこどだ。俺を殺すかい?ジョーちゃん。」

大男は笑顔で白い装束を被った小柄な女に話しかける。



「・・・殺しません。先ずは、一人ずつ話せる人から、会話を、しませんか。」

赤い髪の女が言う。



「OK、なら少しこの危なっかしい大男から離れよう。情報は信じられるやつと共有するものだ。だろ?」

やけに足が長くシルクハットを被った男が言った。

「君、遠隔でもこいつを縛れるかい?」


白装束の女はコクリと頷いた。



大男から全員が少し距離を開けた。



「よし。これでお前さんに話せるな。俺が見えてるだろ?」

首を動かさず、辺りに気づかれぬよう上目で虚空に話しかけた。、


「・・・俺が、見えるのか?・・・」

2つになったそれと、同じ格好の男が、大柄な男の問いに応えた。

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