第6話覚悟と主張に伴うのは責任ですか・・・

芦田勇気は楽しく高校に通っていた。しかし最近は彼女が学校に来てないらしく、少し不機嫌だ。このままなら、あのことを言いふらそうと今夜にも彼女、神田美由紀に連絡しようと考えていた。芦田は教室の近くまで来た。そこで驚き、方にかけていた鞄を床に落とした。


2時間目は全校生徒が体育館に呼び出された。三年生の学年主任がマイクの前で口を開く。

「今朝、三年生の3つのクラスでこの張り紙が貼られ、黒板にこのような言葉が書かれていました。」


学年主任の手には、芦田勇気を含めた5人の名前と「人類史上最低なこの5人は一年生の女の子を引きこもらせた」「許されない行為」「一人の女の子の人生を傷つけた」等の言葉が表記された紙が、体育館のステージにあるスクリーンには、黒板に「芦田勇気は変態バカ野郎である」という静止画が映されている。もちろん、体育館にいる生徒たちはガヤガヤ言い合っている。


「このような行為は許されるものではありません。そして、誰がやったのかはもうわかっています。一年、浅加幸平、池田荘、花咲結、松岡健吾、宮田貫太。立ちなさい。」


俺達は、静かに立った。周りの声は大きくなる一方だ。


「あなた達は何をしでかしたか、事の重大さを理解していますか?一年生が三年生にこのようなことをするのは社会的にどうなのでしょうか?」


生徒指導の先生が怒鳴り、体育館は静まった。


「すいません、これには深い理由があります。私たちに弁解の機会を与えてもらえませんか?」

「なりません、今、この行動について認めたのならあなた達に罪があるのは明確でしょう。そんな人達に機会などありません。」

「なら、先生方はこのままことを済ませてしまうと、この高校に警察が関わることになりますが、それでよろしいですか?」

「何をわけのわからないことを言っているの?あなた達が今回のことについて責任を背負えばいいのです。」

「先生方は、そうして問題を済ませることで、一人の女子生徒の人生を壊し、さらなる被害を生み、高校の名前を汚すような問題が起こってもかまわないという決意を持って今の言葉を発したと受け取ってもよろしいのですね?そうなった場合、学年主任の先生には学校を去ってもらう形となりますが。」

「それ以上、何も言わなくてけっこう。このような行為をしたあなた達に何ができるというの?あなた達には厳しい罰を与えますからね。」


その時、校長先生が立ち上がり、学年主任に対して言った。


「先生、あの子達の言い分を聞きましょう。確かに、彼女らが行った行為は許されないものではありますが、どう判断するかは、彼女たちの言い分を聞いた後でもできるでしょう。」

「しかし、校長先生、この問題は明白であります。そのようなことをしなくても大丈夫です。」

「では、こうしましょう。彼女たちの言い分を聞いて何も無ければ彼女たちを退学。さらなる問題が発生した場合、あなたにも責任を負ってもらいます。」

「なぜそんなことを。」

「このような行為をするには何か原因があるはずです。それを突き通せるかどうかも教育の一環として私は見守りたい。将来社会に出るための教育と思えばなおさらです。そして、私たちはその責任を背負う教師です。簡単に判断するのは先導者としてどうかと思いませんか?そういうわけだから、あなた達、自分たちの意見を主張する権利を与えます。すぐに取り掛かりなさい。」


そして、俺達はステージ上に上がる。


スマホとケーブルを取り出し、パソコンに接続する。すると、後ろから岡田先生が話しかけてきた。


「あなた達を支えるわ、手伝わせてちょうだい。そのくらい先生なんだからさせてくれるよわよね?」


そう言って、岡田先生は校長先生のほうを向いた。この先生、最高だな。

そうして、俺達は友達を救う戦いを始めた。


花咲は言う。


「まず、私達の行動の根本は彼女にあります。神田さんステージに上ってください。」


神田美由紀はステージに向かう。


「彼女はつい最近、芦田先輩に迫られ、連絡先を無理に交換させられただけでなくしょっちゅう下校時に付きまとわれるというストーカー行為を受けました。」


「そんなことはしてねぇ。」

そう、芦田は怒鳴る。


「その証拠に、彼女に届いたLINEを公開します。」


スクリーン上にメールの内容が映される。


「このように、最初は他愛もないコミュニケーションですが、次第に内容がエスカレートしていき、交友関係、恋愛観、行動に関して、あたかも自分の彼女であるかのように振る舞っています。」


「そんなLINE、デタラメに決まっている。」


「そして、芦田先輩は先輩の男友達に自分の彼女だと神田さんを紹介した。そのことを羨ましいと思った友達に対してあなたは、神田さんを共有する提案を4人に持ちかけました。こうして彼女は先輩方5人に道具のようにもてあそばれ、傷ついていきました。彼女は高校に行くことを控え、先輩方に合う機会を減らしました。そんな時芦田先輩はこのようなことを言ったのです。」


スクリーンに映された言葉を見て体育館がざわつく。


このまま学校に来なければ、おまえは5股をしている女だと言いふらし、おまえの学校生活を終わらせるぞ?


流石に誰もが驚いていた。当然だ、これが本当ならば大変なことなのだから。


「先輩から、このようなことを言われ、恐怖で人生に絶望を感じない女の子がいると思いますか皆さん。彼女はこのままだと最悪の場合自殺をしていたかもしれませんよ?」


「だから、言っているだろう、こんなのはお前らがつくったデタラメなんだよ。誰も信じないし、第一、俺がそのようなことを言った証拠なんて明確じゃないだろう。」


本当、この先輩が感情的で良かったあからさますぎる。

だが、


「そうよ、芦田くんはこんな事しないわ。それに、芦田くんには彼女がいるのよ。」

「そうだな、そんなことするやつじゃないぞ。」


そう主張する人たちが多かった。

このままでは負ける。誰もが一瞬で思った。花咲を見る。少し震えているように見えた。体育館には芦田先輩を正義だと主張する声が響いている。今にも俺たちは潰されそうだ。花咲はそれでもマイクを口元に運んだ。そしてニヤリと口角が上がった。


「うふふはははははははは!!」


そう、高らかに笑った。まるで勝利宣言のようだった。


「では、この映像を見てもらおう。」


そう言って、花咲は自身のスマホを取り出し、パソコンに繋ぎ、先生に指示した。

そしてスクリーンに写った映像は素晴らしいものだった。

芦田先輩が神田さんの肩を抱き、友達に彼女として紹介している映像。

他の先輩方が神田さんと接触している映像。

そして、神田さんが芦田先輩からのLINEがきたことを報告している映像が流れた。

一番驚いているのは間違いなく俺達だ。

そして誰かが言う。


「あのアイコンは芦田だよね?」

「今の映像、さっきのスクリーンのないようだよね?」

「いや、嘘、ほんとうなの?」


そして、花咲結は高らかに宣言する。


「我々はこのような自体になることを想定し、予め対策を行い先輩方をどん底に突き落とすために今日この行動をとりました。先輩方、そして先生方、生徒の皆さん、私達の学校にはこれ以外にも問題が発生しているかもしれませんが、ひとまず、このことについて我々からの抗議は以上となります。では、共に責任を取りましょうか。まあ、私達よりかは先輩方のほうが大変でしょうが。」


体育館が歓声で賑わう中、俺たち男組は女性に恐怖をいだきましたとさ。


「なあ、健吾。これからどうする?」

「とりあえず、ああいう女の子を彼女にしないよう注意する。」


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