橙が灯る

 線路にカラスがとまる。

 そんなどこか錆びた風景が、目を奪って離さない。

 獣の叫びが奏でる不穏なメロディー。

 不覚にも洗練されたものと錯覚する。

 くすんだ真鍮と、黒ずんだ革で作られたバングル。

 レトロとも違う、決して強くはない輝き。

 

 一面に敷かれた花畑を飛ぶ蜜蜂は、どんな条件を求めるのだろう。

 

 華やぐ風景は、どこかまた違う場所で。

 

 心を掴むのはいつも、完成品の一歩手前。

 未完成でも、完結している。

 完結の、その先を。

 

 ほんのりと灯る橙に、手を伸ばせるように。  

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