第六話 『負け犬』

翌日、 合格者の四名、八百十夜(やお とうや)、天堂桜音(てんどう はるね)、東雲雷太(しののめ らいた)、遠坂(遠坂)ルナが生徒会室に集められていた。

「この度は申し訳ございませんでした」

この学校の代表、生徒会長らしき人が開口一番に謝罪をした。

「私はこの学校の生徒会長を務めている赤田海科(あかだ うみか)と申します。」

「あんたが謝るってことは、あんたは理事長と共謀してやったってことか?」

東雲が憤りを見せながら尋ねた。

「無礼な! 会長とあの男を一緒にするな!!」

赤田の隣に立っている女が東雲を睨みつけた。身長は160センチほどで、髪は瑠璃色をしていて、短髪でボーイッシュなイメージだ。

「やめなさい、エリカ」

赤田の一言でエリカと呼ばれる人物は渋々後ろに下がった。

「会長、昨日の出来事を詳しく教えて頂けませんか?」

天堂の質問に対し、赤田は表情を曇らせた。

「今回の件は、壱原(いちはら)理事長、いいえ壱原の独断で行われました。この学校の方針では新入生を受け入れないということでした。しかし密かに壱原は新たにこの世界にやってきたものを匿い、今回の件を画策していたようです。うちの学校は上はグレード1から下のグレード3までクラス分けをされていて、クラス2の一部の生徒がこの企てに協力したと情報を得ています」

「当の本人はどうしたんだ?」

東雲が聞いた。

「それが、行方不明です」

だろうな、と八百は思った。こんな殺し合いをバレずにやってのける男だ。そう容易く捕まるまい。

「壱原の情報を聞きだそうと参加した生徒を尋問するつもりだったんですが……」

「口封じですね」

と天童が顔を歪めた。

八方塞がりじゃねーか!と八百は心の中で叫んでみる。

「ですが、こんなものが置いてありました」


──八百くん、君は本当に面白い。実に愉快だったよ。また近々会いに行くよ。


「ふざけやがって! あの野郎! なんで八百なんだよ」

東雲が吠えた。いや、そこかよ!

東雲は絶賛、全員に白い目で見られた。

「話を戻します。いずれ、あの男は現れます。しかし壱原は四天王の一人。今のままでは勝ち目がありません。あなた達には訓練を積んでもらいます」

「あ、あの、四天王って?」

遠坂ルナが初めて口を開いた。黒髪の短髪で、大きめの黒縁眼鏡をかけていて地味目な印象だ。

「この世界の最強魔道士に与えられる称号です。本来ならば1人なのですが、特例で四人に与えられたため、四天王と呼ばれています」

ちらっと東雲を見やると目を輝かせていた。どうせ、カッコイイなとか思ってんだろうなと八百は冷ややかな目で奴を見る。

「話を戻しますが、先ほど魔法適性検査を受けてもらいましたが、あれはクラス分けするものです。結果、天堂さん、東雲くん、遠坂さんはグレード2に編成されます。八百くんは──」

──なんだよ、溜めんなよ、分かってるって俺は戦闘に関しては天才だからな、うん、これマジで。

「グレード3に編成されます」

「うん、うん、は??」

──ええええ!? なんでぇえ? なんでやねん!

「えーと、残念ながら八百くんは魔法適性0でした」

「ちょっと待ってくれ、残酷すぎやしませんか、神様。俺が何したって言うんだよ」

「ぶふぉっ! くっくっく! 」

──てめぇ、笑ってんじゃねーよ! 東雲ぇ! これはてめぇの役回りだろ!

「そんなに落ち込まないで、八百くん。クラス分けなんて特に意味は無いわ。ただの形だから。あと、授業などはないわ。ある程度の設備はあるからそれを活用して下さい。自分で特訓するもよし、誰かの弟子になるのも良い手かもしれないわね。」

東雲の野郎まだ笑ってやる。

「ちくしょう! 今に見てやがれ!」

と堪らず負け犬の捨て台詞を吐き捨て八百は生徒会室を飛び出した。


その後生徒会室は赤田と須藤(すどう)エリカの二人になっていた。

「それにしても会長」

「ええそうね、八百くんの結果。魔法適性は皆無なのだけれど、身体適性、精神適性は共にSランク。彼にとても興味が湧いてきたわ。ふふふふ」

──八百、ドンマイ。

と心の中で励ます須藤であった。

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