サンシャイン

とある複合商業施設の共同休憩所。その一角に険しい顔で向かい合う三人の男達がいた。

その中の一人、スキンヘッドの男は言う。


「君たちはもっと版元、取次との交流を深めるべきだ。我々が書店員として生きていくにはそこの関係性が不可欠だろう」


対して、ドッシリと構えた男が言う。


「仲良しこよしも大事だけどさ〜、二人はもっと先読みして商品を選別しなよ〜。本は鮮度だよ。送られてくる物を置くだけなら誰でも出来るでしょ〜」


対して、小柄な男は言う。


「おめぇらなぁ、それより何よりお客様を大事にしろよ。接客がなってねぇんだよな。ほとんどのクレームは接客次第でどうにかなるだろ。まだアルバイト気分か?」


そして睨み合いが始まる。そう、この三人は酷くウマが合わない。それぞれがアルバイトで入社し、それぞれの道を貫いて社員に昇格した実力者達だからだ。

しかし、店長もこのままでいいとは考えなかった。せっかく他者より秀でた能力があるにも関わらず、他の部分で酷評されるのは意図する所ではない。お互いを見つめ合い、更なる成長を期待していた。


《三人で協力し、店を回してくれ》


そう言って傍観の姿勢を取った店長。もちろん、三人は納得などしない。そもそも、専門的に得意なことを全て引き受けた方が効率が良い。お互いが邪魔者でしかなかった。


そんな三人が、ようやく顔を付き合わせて議論するようになったのにはきっかけがある。

三人より僅かに早く社員昇格を成し遂げた高慢な女が漏らした言葉。それが彼らに火をつけた。


「店長、無駄ですよ。こんな一つの事しか出来ないくせに一流書店員気取ってるヤツら放っておきましょう。だいたい、ハゲとデブとチビが集まって何が出来るんですか。合体したらどうするんですか気持ち悪い」


店長の静止も聞かず、続けてこう言った。


「ぷぷっ、合体したら『サンシャイン』って名乗ってよ。三人の出来損ない社員……サンシャインぷぷぷっ」


三人はそのネーミングセンスの無さにキレた。


そして現在に至る。いつの間にか高慢女子の話に移行していた事で、ベクトルを間違えたヒートアップを止められずにいた。


「だいたい! 俺たちを一括りにしてるけど、入社時期や境遇を考えるならお前も入るだろ!」

「「そうだそうだ!」」

「『サンシャイン』じゃなくて『ヨンシャイン』だろ!」

「「????」」


話が噛み合わない三人は、愚痴も成り立たなかった。その一点においては、何とも平和なものである。


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