夏の病
海! 砂浜! 海水浴!
夏が来たのだ! 太陽が私に力をくれる! 最高の季節が!
「日和ちゃん。声に出てるよ」
「え、えぇ??」
山岸くんは気だるげにハンドタオルで顔を拭う。夏休み初日に興奮しすぎていた私は口の締まりが悪くなっていたらしい。
「本当、夏好きだよね」
「大好き! あ、山岸くんも大好きだから!」
「ついでみたいに言うなぁ」
山岸くんは呆れたように笑い、違う違うと訂正する私をなだめる。
彼と付き合って三度目の夏。はじめの年はプール、昨年は夏祭り、今年は海に来よう約束していた。念願叶って、いまは二人きりで海水浴場に来ていたのだ。
山岸くんに喜んでほしくてビキニデビューを飾ったのだけど、彼はその姿を見るなりぶかぶかの上着を羽織らせてきた。
「そんな姿、他の人に見せたらナンパされるでしょ?」
そんな事を言いながらも、彼の目線は私の顔より下にあった。
確かに私の身体は刺激的だ。胸も大きいしハリがある。腰はくびれてるしお尻もキュッと上がっている。自慢のプロポーションだからこそのビキニなのだ。
でもナンパは嫌い。自分でもパワフルな性格をしてると思うけど、山岸くんとデートをしている時にナンパされた時はその男を殺そうかと思ったくらい。私の身体は山岸くんのものなのだ。
と言っても、それよりもさらに嫌いなものが多いのだけど。
「ねぇねぇ、お兄さんカッコいいね! 一人? 私と遊ばない?」
ちょっと目を離すと、山岸くんは大学生らしきギャルにナンパされていた。
そう、実は山岸くんのほうが圧倒的にナンパされる率が高い。中身はほんわかしてるクセに、一流モデルとも取れるほどビジュアルが完成されているからだ。
よし、殺そう。
「あらお姉さん暇そうね私が遊んであげるからあっちの岩場に行こうよきっと楽しいよそれこそ男に二度と声が掛けられなくなるくらいね遠慮しなくていいのよ痛くないわよほら早く行きましょうよ逃げないでよ遊びたいんでしょ?暇なんでしょ?遊んでよほら早くきてよどこ行くのよ逃がさないわよ逃がさないわよ逃がさないわよ逃がさないわよ逃がさないわよ逃がさないわよ逃がさないわよ逃がさないわよ」
「ご、ごめんなさい!!」
陸上部みたいに早く走ることに特化した走法で、ナンパ女子はどこかへ消えてしまった。
「日和ちゃん」
「なに?」
「貝拾いに行こっか」
「うん♡」
ちなみに、私がナンパされた時の山岸くんは、これの比ではない。
ヤンデレ同士の恋愛ってとっても幸せなのだ。
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