『フクロウとネズミ』如月さんお題
ある森での出会いの話をするね。
陽の光がいつもの数倍強く感じられたその日の朝。私は死ぬほどお腹が減っていたんだ。フクロウなのにドジな私は、夜に何度も狩りをしたけど一匹も捕まえることが出来なかった。
「見つけた!」
お腹をぐぅぐぅさせて朝方に見つけたネズミ。半分閉じた目で狙いを定めて飛びかかったよね。
「そやっ!」
力いっぱい爪をたてて掴みあげる。確かな手応えがあって、ようやくだと泣き出しそうになってた。
だけど、その瞬間。
「食べないで! 何でもするから!」
最後の足掻きとばかりに声を上げるネズミ。しっかり押さえ込んでいたはずの私はびっくりして見降ろすと、足首にへばりつく小さなネズミがいて驚愕だった。
私が掴んでいたのは、そのネズミが食べていた腐ったウサギの死骸だった。
「いやー! 気持ち悪い気持ち悪い!」
「落ちる! 落ちちゃうー!」
ぺぺっとウサギを払い落としたせいでうまく飛べなくて、空で有り得ないほど回転したりフラフラしてたのは今でも冷や汗ものだ。
結局ネズミと協力して上手く態勢を立て直すことが出来て、無事に木上に着地することが出来たっけ。何だかんだで食べ物もらっちゃって仲良くなっちゃうし、あの時は焦ったなぁ。
「それ、僕たちの話?」
「うん」
私は頷くと、手元の竿から糸を手繰った。またスカだ。
横で小さな石に腰掛けたネズミさんは調子よく小魚を釣り上げていた。本当に何をさせても器用だ。
「最近のびっくりした話もそれかぁ。前にした『最近嬉しかった話』もそれだったよね」
「だって、ネズミさんとフクロウの私が一緒にいるって、それだけ変な話なんだよ?」
「まぁ、確かに」
私は懲りずに、針に餌を付けて川へ投げ込む。釣りの才能がないのか、まだ一匹も釣れてない。
ネズミさんは釣った魚の数を確認して、ギョッとしていた。
「フクロウさんそろそろ.....。後は僕がするからさ」
「嫌だ。まだ私釣ってないもん」
「このままだと晩御飯少なくなっちゃうよ。フクロウさん大食いだから.....」
「誰が大食いよ! ネズミさんとは大きさが違うだけでしょ!」
羽でネズミさんをバサバサしてやった。彼は後ろに転んで、困ったようにこちらを見てくる。
その時、私の竿が強くしなった。
「フクロウさん引いてる!」
「わっ、わっ」
思わず力いっぱい引いてしまい、糸が切れた。ネズミさんと一緒に肩を落として、私は観念した。
「ま、ネズミさんを食べればいっか」
「それ、毎日言ってるね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます