チーター絶対殺すマン
英雄の名を冠すると言うことは、前提としてそこに辿り着くまでの研鑽に費やした時間、他の追随を許さぬ圧倒的な経験が存在する。
近道なんて無い。他人より考え、他人より行動し、他人より多くの決断をする。ただそれだけだ。
その道を踏まず、英雄になることは出来ない。
この世界が魔王軍の統治下におかれたのは五年前。その立役者として、当時数々の戦果を叩き出していた勇猛果敢な人間の英雄『勇者』を撃退し、戦場の前線を単独で押し上げた魔王軍の突撃隊隊長がいる。
そう、私だ。
戦争が終わると、私は最大の功績者として魔王国民から讃えられた。魔王から英雄の名を頂戴し、平和の象徴となったのだ。
しかし、突如として次々と勇者が増えていったのだ。いや、正確には、『勇者のような異質な力を持ち、自らを勇者と語る人間』だ。
各地で混乱が起きた。その者たちは皆、笑いながら魔族を殺害し、経験値がどうの、チートがどうのと口にする。
初めて私がそ奴らと交戦し、勝利する事が出来た時だった。尋問して情報を吐かせた結果。どうやら『チート』とは、何の経験、何の努力もせず他人から授かった能力だという。
そんなモノに平穏が乱されていたなどと言うのか。
私は更なる力を得るため、各地を回ってチート勇者との交戦を続けた。その甲斐あってか。
「この.....中ボスがぁ!!」
「ふん.....」
「ああ.....、がふっ!」
私は背に回り込んだ『光速を越える素早さ』を手にしたチート勇者の腹に大剣を突き立てた。
「なんで.....反応.....」
「経験の少ない輩はすぐに背中が死角と思い込む。お前が消えた瞬間に剣を後ろに向けただけだ。光の速度に反応出来る脳を手に入れるべきだったな。馬鹿め」
そのまま勇者は絶命した。
そう、チート勇者の弱点。それはアタマが弱いことだ。
『海を操る力』『マグマを操る力』などを選択するタイプはまだマシだ。だが、身体能力を上げたヤツは自分からその能力の説明をしだす阿呆までいる。
経験が足りないから判断が出来ない。経験が足りないから予測も出来ない。戦い慣れてみれば、ただの見掛け倒し。チート勇者は弱いのだ。
「さて」
チート勇者が出現する場所は特定してある。目の前にある元王都だ。天使の加護で護られており中には入る事すらできないが、周辺で待つことは出来る。
簡単なことだ。成長する前に殺す。必勝法があるのに使わないヤツは戦場にはいない。
さぁ、次の英雄気取りは誰だ?
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