眞鍋 2
私が必死に勉強する理由。
それは治癒する能力を科学の力で代用する技術を開発する事。
何故その技術を開発したいのか?
それはリサが持つ、受け継がれた能力を使わなくても良くする為。
進学し私が研究室に入ると、中々会う機会は減ってしまったけれど、
それでも合間を見ては、女王の特権を利用し忍び込み、またいつもの定位置でニコニコ微笑みながらこちらを見ている。
リサのお陰で予算は無限にあり、いい所までは進むのだけれど完璧ではない。
薬である程度の病や怪我は治せるようにはなっても、治癒能力程の効果はない。
・・・・・・生身の人間を科学の力だけで癒すのは無理。
最終的にその壁にぶち当たる。
・・・・生身の人間じゃダメなんだ。
なら、生身じゃない人間なら・・・・・?
そもそも人間って脆くて弱い生き物。
すぐ病気するし怪我をする。
怪我や病気の他にもメンタル面だってすぐに崩壊してしまうし、めんどくさい。
ならいっそ、その生身の人間をベースに強い人間を作れば・・・・?
生身の人間に手を加え、強化する。
強化された人間は、生身の人間よりは強くなる。
その強化された人間用の治癒薬品を作り、投与する。
国中の人間全てを強化するのは大変という事はわかっている。
だから、強化するのはごく一部の人間だけ。
生きる価値がない人間は、そのまま弱らせて死ぬのを待つ。
リサはこの国でずっと一人ぼっちだった。
だから別に国中の人間が別に生身の人間である必要はないじゃない。
むしろ全員がリサにとって忠実なロボットの方が、リサはもっと暮らしやすくなるはず。
私は研究する対象を変えた。
何年も時間をかけ、時には死刑囚を実験台として流してもらい、莫大な費用をかけて完成させた。
その名も漆黒の翼。
まだ完璧ではない。
これを埋め込まれた者は怪我を自力で治す事は出来ないし、髪の毛も生えてこない。
生殖機能は絶滅。
国中が漆黒の翼を埋め込まれた人間で溢れれば、数十年後には人間の生命が途絶える可能性がある。
まだまだ不完全な物。
1つ言える事は、これを埋め込まれた人間は私たち生身の人間よりズバ抜けた能力を持ち強い。
ただその能力を使い続ける事と引換に身体が衰える。
どの程度で劣化が進むのかも未知の世界。
・・・・・・これは実践してデータをとっていくしかない。
実践データを集め、その都度改良していく。
こうして完璧な強化人間を作っていく。
全てはリサの為に。
「リサ・・・・。お待たせ。完成したわ」
私はリサにこれまでの事とこれからの事を全て話した。
リサはニコニコしながら私の計画に賛同してくれた。
これでリサとの約束に1歩近づいた。
私のやりたい事は、リサを救う事。
リサが毎日を楽しく過ごせるよう、その環境を作り上げる事。
・・・・・その役割は私にしか出来ないから。
私の事を初めて理解してくれた人。
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