女王の騎士 1

ハヤトが部屋を出て行った。

一人ぼっち。

天井を見るか、残り少ない点滴の容量を眺めるかしかやる事がない。

この点滴が終われば、俺も行かなくてはいけないのか・・・。


身体はさっきに比べれば楽にはなった。

でも万全ではない。

この状態で敵と戦わなければならないなんて。


これが何の武器も持たない生身の人間なら余裕だろう。

しかし、きっと相手は武装している兵士。

ただで済むとは思えない。



・・・・・死にたくない。

まだ生きていたい。



身体が震える。

看護師が部屋に入ってきた。


「あら、もう少しね」


そう呟くと、器具を調節し点滴が落ちる速度をあげる。




やめてくれ!それが全て落ちきったら、俺は戦わなくちゃいけなくなる!

せめて先に部屋を出て行ったハヤトが、少しでも敵を削ってくれていたら・・・。




そんな事を願いながら、残り少ない点滴の残量を眺めていた。


「はい。お疲れ様です」


腕から針を抜かれる。

いよいよか・・・・。


医務室を見渡すと、風の国が攻めてきたというのに怪我人がほぼ居ない。

怪我人が居ないという事は水の国が優勢という事なのだろうか?

気になり状況を聞いてみると・・・・・



「あぁ・・・、怪我人が少ないだけよ」


と返って来た。

怪我人が少ないだけ。

・・・・・死人が多いという事なのか。



「医療部も人手不足で・・・・逃げ出す人が多くて。

正直もう皆気づいてるのよ。この戦いに勝目はないって」


やめろよ・・・・。



「皆考えている事は一緒。

国を守る為に戦おうなんて人いない。

いつ・どのタイミングで逃げようか見計らってるだけ」


不安になる。



「女王だってもう・・・・・」


「愚痴なんて聞きたくない!俺は行くっ!」


他人の愚痴なんて聞いていたら頭が狂いそうだ。

お前たちはいいよ。

愚痴や文句を言いながら逃げる事が出来る。


でも俺は違う。

もう逃げだす事なんて出来ない。

立ち向かうだけ。



俺がヤならくちゃこっちが殺される。

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