リサ 8

私以外の人間が慌ただしく動き回る。

みんなはどうしてそんなに焦っているの?

別にこの国がどうなろうがどうでも良いじゃない。

どうせみんなこの国を守りたい訳じゃないでしょ?

私の事なんてどうでもいいんでしょ?


一生懸命に動き回る意味はなに?

自分の為?

家族の為?

友人の為?


私には家族はいない。

いつも一人ぼっち。

友達は眞鍋だけ。

なんだけど、眞鍋は研究に熱中しちゃって相手してくれないの。



だから私は一人ぼっち。

やりたい事も何もない。



こんな広いお城で、沢山人が居るのにいつも一人ぼっち。



ただ時間を持て余すだけの、暇な日々。

生きる意味も理由も何もない。



いや、1つだけ残っていた。

私が貫きたい意志が1つだけ。




司令室のドアが静かに開く。

皆忙しそうに動き回っていて、私以外誰もそいつが入ってきた事に気づいていなかった。

口元は不自然な位に口角を上げ微笑んでいるのに、目は笑っていない。

不気味な表情をした男。

男は片手づつ懐に手を入れると、銃を取り出した。

そしてその銃口を眞鍋に向ける。


眞鍋を撃つの・・・・?

急いで立ち上がると男に飛びついた。

銃口に身体をかぶせる。



「女王・・・!なんでここにいる邪魔だ」


男は容赦なく引き金を引いた。


お腹に衝撃が走り、一度その場に崩れ落ちる。


痛い・・・・けど・・・・。


再び私は男にしがみつく。

しがみつくたびに男は私に銃をぶっぱなす。

何箇所も打たれる。



慌ただしかった司令室に悲鳴と混乱が起きる。



「リサ・・・・!」


眞鍋の悲鳴にも似た声が聞こえる。

別に眞鍋を助けたかった訳じゃない。


私は私が貫きたかった意志を全うしようとしているだけ。

治癒能力を根絶やしにする。

これが私のやりたい事。

私が子を産まず死ねば、この能力は途絶える。

もう2度と私のような哀れな人間が生まれる事はない。


だから・・・・



何度も身体が動くうちは、男に必死にしがみついた。

その度に撃たれる。

撃たれれば撃たれる程、私は死に近づける。

だから何度も立ち向かう。



周りの兵士達も銃を構えて応戦しようとするけれど、私が邪魔で撃つ事が出来い様子。

邪魔しないでよ、私は死にたいんだから。



私には何もない。

大切な人も物も何もないの。

どうせこの国はもう終わる。

私にとってこの国なんてどうでもいい。



なら私はここで死にたい。

唯一の親友である眞鍋の傍で。

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