リサ 7
今日は涼が帰ってくる日。
一番お気に入りのドレスを着て、ヘアメイクも念入りにする。
城内は慌ただしかった。
みんな忙しそうに動き回っている。
私は鼻歌を歌いながら司令室へ向かった。
きっとそこに居れば、涼にすぐに会えるはずだから。
指令室に入ると、眞鍋は忙しそうに指示を出していた。
私の事なんて気付かない。
一通り指示を出した後、コーヒー片手に椅子に座る所を確認。
静かに眞鍋に近づいていく。
「ねぇ眞鍋。涼はどの位壊れてしまっているの?
私、涼を治癒しようと思っているの。
だって涼はこれからこの国を背負ってくれる人でしょ?
だから一度ココでメンテナンスをしないと・・・・」
「あぁ・・・、そんな事しても無駄よ。
涼に治癒能力は一切効かないから」
「えっ?」
「あの子の身体の70%は改造してしまっているからね。
残り30%の部分を治癒した所で焼け石に水。
リサの治癒能力は病気や怪我には有効だけど、老化やメンタル面は治す事が出来ないじゃない。
涼が壊れてしまっているのはそこだから、もうどうにもならないの」
「嘘・・・・」
「そんなに涼が大事なら、落ち着いたら脳を移植する?
そうすればまだ涼は生き続ける事は出来る。元の人格は消滅しちゃうけどね・・・・」
「それじゃダメよ!私の意見に賛同してくれたのは今の涼で・・・・別の人格じゃない・・・・」
項垂れながら、元居た定位置に戻った。
そんな・・・・。
涼が消えてしまう?
居なくなってしまう?
しばらくして涼とハヤトが司令室へやってきた。
いつも書面や口頭でしか情報が無かったから、実物を見る機会がなく、久しぶりに見た涼の姿は、髪の毛には白髪が目立ち、顔はシワだらけ。
動きは鈍くヨタヨタ歩き、見た目は完全に老人。
私が知っている涼では無くなっていた。
「あのっ!眞鍋さん。俺・・・・最近身体が重くて、その・・・・。
先に点滴か何かして貰えませんか?動きが鈍くて・・・」
「あぁ・・・・・、そろそろ涼君の脳もダメかー・・・・。
髪の毛や肌が老化する所まできたら、もう手遅れね。
新しいのに取り替えなくちゃ限界なのかも」
「とりあえず点滴は出しておくわ。
その間時間稼ぎをしててあげて。
点滴をしてもその場しのぎでダメだと思うけど」
「ハヤトは・・・・大丈夫みたいね。
そもそも貴方は漆黒の翼を全然使ってないみたいだし」
「大変です!風の国の者と見られる奴らが裏口から城内へ侵入してきました」
「なんで?警備は何してたの?」
「それが警備は何者かによって射殺されていて・・・・・」
「眞鍋さん・・・・。手遅れって何?脳がダメってどういう事?」
「早く二人を連れて行きなさい!今はかまってる暇ないんだから!」
動揺している涼とハヤトはそのまま部屋から引っ張り出されていった。
私はあまりの衝撃にそこから動け無かった。
私が知っている落ち着いている涼と違う。
別人。今のは誰?本当に涼なの?
あんなの私が知ってる涼じゃない。
私が愛した涼じゃない。
私の理解者である涼がいない。
脱力。心にポッカリ穴が空いた気がした。
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