早見 7

ハヤトが抜けた直後、マリアはあっさり戦線離脱した。

眞鍋によると、もう元の人格は戻らないらしい。

元々精神がぶっ飛んでいたから、完全に壊れるのも時間の問題だったみたいだし、元の人格が消えた今、仇を取った所でどうにもならない。

とりあえずマリアに関しては後々考えるか。



残るは涼とミカ。

自分が正義の味方だと勘違いしている涼と、性格が腐りきっているミカ。

小さな子供を容赦なく殺せる感覚を持ち合わせているのは、この二人だろう。

生きている価値がない二人。

いっその事、二人共殺してしまおうか。



自分の事しか考えていないミカは、わずかな快楽を手に入れる為に夜な夜な無数の人間を殺して回った。

流石にこれはまずい事なのだが、上には報告せず処理をした。

厳罰され本部に強制的返還されたら、死ぬ所を見れない。

この目で絶望しながら死んでいく姿を見てこそ、俺の報復は終わるんだ。



ミカの実家周辺に、ミカがclearskyの一員である事を書いたビラをばら撒いた。

あっという間に近所からの嫌がらせが始まり、外出するのが困難に。

ミカの家族は引きこもり家から出れなくなった。


追い詰められていく家族。

それを知らないミカ。

ミカの最期はとても哀れだったなぁ。

誰にも助けて貰えず、人間扱いもされず、撲殺され殺される。

さぞ辛かっただろう。


でもこれは自業自得。

己の犯した罪を己の身を持って償うんだ。




涼の事はとりあえず放置。

こいつはバカだからいつか自爆するのが目に見えている。

信じ続けていた眞鍋にあっさり捨てられる時の絶望感と孤独感。

計り知れないだろうな。

・・・・・想像しただけで笑える。




眞鍋の居る部屋へ真っ直ぐ向かう。

懐に銃を隠して。




俺がここまで命をかけてやった事の理由を他人に話せば、恐らく全員が滑稽だと笑い飛ばす事だろう。


安定した将来を棒に振り、知り合いでも身内でもない。

会話した事もなければ、彼女がどんな生活をしていたのか、本当の性格すら何も知らないんだ。

ただ毎日通っていた弁当屋の女の為に、何十という人間を殺し、他人を利用した。

それを滑稽に思う人間もたくさん居るだろう。



外野が見れば安定した職につき、金に不自由もする事もなく、老後の心配をする必要もない。

他にもやれる事は沢山あった。

他人は間違いなく俺の事をそんな風に思うんだろう。

俺の気持ちなんて考えず、自分たちの勝手な想像と妄想で、勝手に俺を恵まれた人間だと羨ましがるのだろう。




・・・・俺にとっては、退屈で生きてるんだか、死んでるんだかわからない人生だったよ。




司令室へ到着した。

あいつはここにいる。

城中の監視カメラを食い入るように見つめ、ヒステリックな声を上げて指示を出してるんだろう。

あいつはそういう女だ。


ドアを静かに開けると、やはりあの女はヒステリックな声を上げ偉そうに指示を出していた。

思い返せばこいつは、女王のお気に入りという特権を生かし、研究ばかりを続け下の者にデカイ顔をして指示するだけのクズだったな。

下級の人間がどういう思いをしているかなんて理解もせず。

コネや後ろ盾がなければ、お前みたいな性格がクソでプライドが高いだけのバカは誰にも相手にされなかっただろうよ。




懐から銃を取り出し、眞鍋を銃口を向けた。

これで終わりだ、バカ女。




彼女の顔が脳裏に浮かぶ。

最期に思い出せた。

俺にとって世界で誰よりも美しく儚かった女性。

これからの人生全て失っても良いと思える位、俺にとって彼女の存在が大きかった事に、失ってから気づいた。



・・・・・生きがいになっていた彼女の存在を。

その事にもう少し早く気づいていたら俺のこれからの人生、もっと素敵で充実した物になっていたのかな?

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