早見 5



「どういう事ですか・・・・。

彼女が自殺したって本当ですか?」


「えっ?・・・・貴方はいつも来てくれてる・・・・。

えぇ、先日彼女は自殺しました」


驚きつつ、俺の問いかけに答えてくれるオーナー。



「息子さんが・・・・万引きしちゃったんだよ。

今子供の中で流行っているナントカカードとかいうのを。

国の法律が変わったでしょ?

それで捕まって処刑されちゃってさ・・・・・」



嘘だ。



「彼女にとって息子の成長を見届ける事が生きがいだったから、それが居なくなってしまったらもう生きる意味も価値も無かったのだろうね。

気の毒な話しさ」



頭の中が空っぽになった。

もう会えない・・・・?

あの笑顔をもう見る事が出来ない。



「ちょっと!お客様!まだお弁当が・・・・」


弁当を受け取る事を忘れ、店を出て行っていた。

目的もなくフラフラ歩き回る。

歩き回った所で、彼女にはもう会えないのに。



気づけば外は真っ暗で、歩いている人はまばらになった。

あれから結構な時間が経っていたらしい。


いっそこのまま死んでしまおうか。

そんな考えさえ頭をよぎる。


俺の人生。

元々何もなかった。

何もない人生が更に空っぽになった。


誰のせい?

・・・・・・国のせい。

・・・・・・法律のせい。

あんな下らない法律を作った女王のせい。



・・・・・・・彼女の無念を晴らしたい。

その為なら何でもやるさ。

もう俺には何も残っていないのだから。



公衆トイレに入る。

鏡に映る自分の顔。

酷い顔だ。



口角を上げて笑顔を作った。

人は笑顔を向けられると自然と警戒を無くす。

この作り笑顔なら、みんな俺の事を信用してくれるはず。





「早見さん、今日は機嫌が良いですね。

何かあったんですか?」


翌日。

俺の顔をみた同僚が声をかけてきた。



「えぇ、わかります?とても愉快な事がありましてね。

笑いが止まらないんですよ」


俺は常に口角を上げ、笑い続けた。

これも全ては女王に一矢報いる為。

その為なら、人殺しでも嘘でも何でもやるさ。

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