早見 4
法律が変わる。
それに伴い、俺に指令が降りた。
なんでも死刑執行人の身の回りの世話・スケジュール管理が主な仕事。
簡単な話がマネージャーみたいなモンだ。
地方へ出る事が多いらしく、独身で結婚する予定が無さそうな俺が選ばれた訳だ。
家に帰ったって待ってる家族はいないし、妥当な人選だろう。
断る理由もなく、すぐに引き受けた。
渡された資料を見る。
死刑執行人に選ばれたのはまさかの中学生・・・・・・・・・まだ子供じゃないか。
こんな子供が人を殺せるのか?
疑問に思う所だ。
それからは仕事が180度変わり、漆黒の翼や法律の基準について勉強する日々になった。
まだやる事がなかったので、定時になれば帰宅。
帰り道。
いつものようにあの弁当屋に寄って、晩飯を買う。
弁当を受け取り礼を言い店を出た。
・・・・・あの人の息子は何歳なんだろ?
もし自分の息子が死刑執行人に選ばれたら、あの人はどうなってしまうのだろうか?
いつも笑顔のあの人が泣く姿・・・・想像出来ないな。
なーんて、どうでもいい想像か。
ある日。
いつものように常連客との会話を盗み聞きしていた。
「学校で流行っているらしくて、カードが欲しいってねだるんです。
あんなの一時的に人気なだけで、すぐに飽きちゃうのにね。
お金がもったいない」
あーあるある。
大人になったらくだらなく思える事でも、子供にとっては重要だったりする。
大人と子供の生きる世界は違うんだよな。
ここでは一生懸命仕事をこなし、家ではしっかり母親業をやってるんだな。
関心したと同時に、地方へ出たらここに来る機会が減ってしまうのが寂しく思えた。
こんな些細な会話を盗み聞き出来なくなるのは残念だ。
弁当を受け取り、礼を言って帰る。
特別な事なんてない。
ただこんな些細な事が俺にとっては日課の1つであり、楽しみでもあった。
そんな楽しみが突然消えた。
ある日を境に彼女が店に来なくなった。
働きすぎて倒れてしまった?
それとも息子さんが怪我をしたとか?
気になる。
けど、店の人間に聞く勇気なんてない。
きっといつかまた彼女が店に出てきてくれるだろう。
そう信じ、彼女が居ないとなんとなくわかりつつ店に通った。
やっぱり今日も居ない・・・・・無言で弁当を受け取る。
そしてあの日がやってきた。
常連客っぽいおばさんとオーナーが雑談していた。
別にこいつらの会話には興味がなかった。
ただのBGMのように聞き流していたけど、会話の中に彼女の名前が出現した時俺は思わず立ち上がってしまった。
会話が聞きたい。
一歩ずつ二人に近づいていく。
「愛想が良い人だったのにね。まさか自殺していたなんて・・・・」
「彼女にとって息子さんはかけがえのない存在でしたから。
息子さんが殺されたら、もう生きる価値を見いだせなかったのでしょう」
「たかがカードを1枚万引きしただけなのでしょう?
子供なんだから、そこからいくらでも更生出来ただろうに」
「女王もなんであんなおかしな法律を作ったのか。
彼女が気の毒でならないよ・・・・」
死んだ?
女王が作った法律?
息子が殺された?
足が震える。
まさか。
そんな。
彼女にもう会えない・・・・?
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