早見 2

「・・・・ハヤトさん。

まだ貴方たちが討伐に出る前。

施設で犯罪者達を虐殺している時に、小さな男の子をみませんでしたか?」


小さな男の子?居たかな?

たくさんの人間が鎖で繋がれていて、誰が居たとか細かくは覚えていなかった。



「小さな男の子・・・・・?さあ覚えてません」


「その子の罪はカードの万引きです。

万引きは良くない事だ。イケナイ事。

それを理解しているのだけれど、その子はカードを盗むしかなかった。

カードを盗まなければ、学校でイジメられてしまうから」


あぁ・・・・。


「その子の母親も別に意地悪をして買わなかった訳ではなかった。

何枚も同じ物を持っていても仕方がないから、軽い気持ちで購入する事を渋ったのです」


なんとなく想像が出来た。


「その結果、男の子はカードを万引き。

そのまま捕まり、施設へモンスターとして送り込まれた。

その後の事は・・・・・わかりますよね」



あの時、僕たちの前に放たれた鎖で繋がれた人たち1人1人に人生があった。

犯罪を犯すまでに十人十色、色んな理由があった。

眞鍋さんと女王はそれを一切聞きもせず、犯罪者全てを処刑しようとした。




「その子は私の好きだった人の子供です。

彼女はその子が捕まり処刑された後に自殺しました。

本当はね。この国がどうなろうがどうでも良いんですよ。

覚えていませんか?初めて会った時、私はこの国の民を射殺した事を」



・・・・覚えてる。

目の前に居る人間を殺すのを躊躇っている僕たちを横目に、早見さんは銃を乱射していた。




「この国なんてどうでもいい。

この国の人間なんて興味ない。

私は女王の大切なものを全て奪いたいだけ。

女王の大事な物・・・・・わかりますよね?

この国と眞鍋の2つ」


眞鍋さんと女王が何か深い繋がりがある事は僕もなんとなく理解できていた。



「私はこれから眞鍋を殺しに行きます。

ハヤトさんはこちらへ向かってください」


そう言うとタブレットを僕に手渡した。



「僕も行きます!別に僕だってこの国に興味がある訳でもないし・・・・」


いくら早見さんとはいえ、眞鍋さんを殺すとなると無傷では済まない。

殺すのは不可能にさえ思える。

良くて相討ち出来るかどうかだろう。



「それはダメです。

このタブレット通りに進むと、土の国の人間と落ち合う事が出来る。

あの人たちにこれを渡してください。

水の国の機密情報は全てこの中に入ってます」



・・・・嫌だ。

ここで早見さんと別れるのは嫌だ。


ずっと1人ぼっちだった僕にとって、早見さんは気づけばお父さんみたいな存在で、短い間だったけど早見さんが居た事で落ち着いていられる自分が居た。

僕にとって安定剤だった。

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