早見 1
混乱している城内。
人ごみを掻き分け、僕は早見さんを探した。
先ほど眞鍋さんと再会した時、何者かが裏門に居る警備員を殺し、鍵を開けたと言っていた。
恐らくやったのは、早見さんだろう。
土の国経由で風の国が襲撃してくる事を知っていたのだろうか。
しばらく探し回った結果、早見さんは地下にある貯水タンクに居た。
「早見さん!」
声をかけると、
「あぁハヤトさん無事でしたか。
これから祭りが始まりますよ。
ハヤトさんは安全な場所に隠れて下さい」
そう言うとカバンから何かを取り出す。
「これは毒です。
これを水に混ぜますので、ハヤトさんは私が良いというまで、絶対に水や食事は取らないようにしてくださいね」
ドボドボと謎の液体を流し込む。
無色透明の液体。
誰もまさか毒が仕込まれているとは思わないだろう。
「昨日の夜も一度毒を流し込みました。
今朝から水を飲んだり、料理に使われた物を過度に摂取した者たちは倒れていき、時期に死ぬでしょう。
少しでも戦力を落としたかったので」
いつものニコリ顔。
何の迷いもなく、毒を流し込む。
「お腹がすいたらこれを食べて下さい。
栄養剤です。お腹は膨れないかもしれませんが、漆黒の翼に栄養を骨まで吸い取られる心配はない」
そう言うとアタッシュケースを僕に手渡した。
「ん~・・・・・、さてハヤトさんをどこに隠しましょうか。
なるべく土の国の人間が見つけやすい場所が良いのですが・・・」
「ここが安全か・・・・・。
いや毒を流し込んだ事がバレて、誰かが押し入ってくる可能性が高いのかも・・・・」
タブレットを取り出し、僕の隠れ場所を探しはじめる。
「あの・・・・・、早見さんは隠れないんですか?」
僕だけ1人が生き延びた所で、反乱組織の事なんて何もわからない。
もし僕が保護をされた所で、上手く説明出来ないし、
指揮をとっていたのは早見さんなのだから、早見さんが生き残らなくては意味がない気がする。
「私ですか?隠れませんよ。
まだやる事がありますから」
一瞬こちらを向くとニコリと笑った。
「やる事があるなら、僕も手伝います!
隠れていても退屈ですし、僕には漆黒の翼がある。
万が一早見さんに危険が生じた時、守れるかも知れないし・・・・」
「それはダメです。
城中には無数の監視カメラがあります。
ハヤトさんがこの国の兵士に危害を加えたとなると、次は間違いなく脳を移植されてしまう。
もし風の国の侵略が失敗に終わった時、ハヤトさんが殺されてしまっては困るんです」
「でも、僕が生き残るより早見さんが生き残った方が・・・・」
「いいんです。別にこの世に未練なんてありませんから。
この国が滅べばどうでもいいんです。
私はその手助けを出来ればそれでいい」
何故そこまでこの国を滅ぼしたいのだろう?
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