真実 6



「俺・・・・・どうなるんだよ。

嫌だよ。死にたくない。

まだ生きていたい。

これからなんだ・・・・・」


「・・・・・」



そんな目で見るなよ。



「結局俺はこうなっちゃうのか・・・・。

見返せるって思ったのに・・・・・。

お前はいいよなぁ・・・・、ハヤト。

勉強も出来て見た目も良くて社交的で・・・・・。

俺の気持ちなんてわかんねぇだろ・・・・・

優等生には劣等生の気持ちなんてなんにもわかんねぇ」


結局世の中、そういう人間が勝っていく。

俺みたいな見た目も性格も冴えない奴は、バカにされ利用されボロ雑巾のように捨てられる。


そんな人生を変えたかっただけなのに。



何にも怯える事がなく、堂々と綺麗な青空が見たかっただけ。

最初はただそれだけだった。

それなのに見る事は出来なかった。

漆黒の翼を埋め込まれて以来、その事を思い出し空を見上げるといつも曇っていた。

綺麗な青空を見る事は出来なかった。

死ぬ前に見てみたいな・・・・綺麗な青空。



「僕さ・・・・・嘘なんだ」


「あ?」


突然ハヤトが笑い出す。



「漆黒の翼を埋められた理由・・・・・・あれ嘘なんだよ」


嘘?


「猫を助けようとして車に轢かれたって話したけど、あれ全部嘘。

本当は猫なんて助けてない。

4階建ての建物から飛び降りたんだ。

学校にも居場所はなかったし、親の言うとおりの良い子ちゃんを演じるのも疲れちゃって。

僕優等生じゃなかったんだ。ただ演じていただけの偽者だよ」


狂ったように笑いはじめるハヤト。

演じていた?こいつも俺を騙していたのか?


??????


演じていればもしかしたら理想の自分を手に入れる事は出来た?

なら俺も頑張れば優等生だって、コイツらを騙せた?


何だソレ。




「もうこの国も終わりか。

両親殺すのも失敗したし、さてどうしようかな」


と、言うとハヤトは立ち上がった。



「涼が家族を殺したと知った時、殴ったの覚えてる?」


あぁ・・・・・覚えてる。

すっげームカついた。



「涼の事殴った癖に、自分も両親を殺そうとしたんだ。

結局逃げられてて殺せなかったんだけどね」


クスリと笑う。



「全然優等生でも良い子でもない。

生きる目的も生きがいも趣味も何もない。

ただの空っぽな人間なんだよ、僕は」


スタスタと扉の方へと歩いていく。

どこへ行くつもりなのだろう?



「・・・・・そんな僕の事を妬んでくれてありがとう。

空っぽな僕を認めてくれて嬉しかった」


ニコリと微笑むと、ハヤトは部屋を出ていった。




・・・・・。

言葉にならない。

俺も心が空っぽだ。

何も考えられない。


俺もハヤトも結局同じ人種だったんだ。

ただ演じていたか、演じれなかったか、それだけ。

そんな少しの違いなのに、俺は手遅れでハヤトはまだセーフ。


いや、同じじゃない。

やっぱりハヤトの方が知能は上。



俺・・・・・・バカだったんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る