愛する人 4



「熱っ!!!・・・・火傷したじゃないバカ女っ!」


マリアはそう叫ぶと持っていたカップを投げつけ、お茶を持ってきてくれた女性を無残に切り裂いた。

室内に悲鳴が響く。



「うるさいっ!黙らないとあんた達も殺すわよっ!」


その姿を俺はただ見ているだけ。




「申し訳ございません。す、すぐに新しいお茶をっ!」


ガタガタ震えながら校長が指示を出すが、恐怖で誰も動く事が出来ない。



「もういらない!ダルイしもう帰りたいから、早く教室へ案内して。

気分が悪い!さっさと殺してさっさと帰りたい」


マリアは立ち上がりドアノブに手をかけると校長を睨んだ。



「はいっ!今すぐ案内しますっ!」


そう言い椅子から立ち上がろうとするが、腰が抜けたみたいでその場に崩れ落ちる校長。

そんな姿を冷たい目で見下ろすと、無残に校長に足を振り下ろした。




俺以外の人間全てをただの肉の塊へと化すと


「もうめんどくさいから適当に殺して帰りましょ」


そう言い、マリアは部屋から出ていった。



顔についた返り血が床にぽたぽた流れ落ちていく。

きっと今鏡を見たら、酷い顔してるんだろうな。



廊下から悲鳴が聞こえる。

マリアを止めないと。

大量虐殺はダメなんだ。

ちゃんとモンスターを討伐しないと。


頭ではわかっているのに、身体が鉛のように重くて動けない。

これはいつもの倦怠感からなのか。

それとも俺が知っているマリアが居ない喪失感からなのか。


やはりあの日、マリアは死んでしまったのだろう。

あの錯乱した姿が、俺がマリアを最後に見た姿。


じゃあ今、マリアの皮をかぶり暴れまくるあの生物は何だ?

マリアの身体と心を汚すあの小汚い生物。

マリアを汚すおぞましき存在・・・・・・モンスター。



右手から剣を出すと、モンスターが無残に殺した人々の身体に突き刺していく。


「血をくれ。身体が重たいんだ」


もう動くのを止めた身体から、血を吸収していく。


「ごめんなさい。あなた方の憂いは俺が晴らす」



部屋を出て悲鳴が聞こえる方向へと歩いていく。

廊下には無残に殺されていったであろう遺体がゴロゴロ転がっている。


何十何百という遺体が転がり、足の踏み場がなく止む終えずそれを踏みながら先へ進む。

向かうは汚らわしいモンスターの所へ。




・・・・居た。


やつは居た。

返り血を浴びながら、無実な人間を次々殺していく化物。

俺はゆっくりそいつの傍へと近づいていく。



2mくらいの距離へ近づいた時、やつは俺に気づきこちらを振り返った。



「涼遅いじゃない!全部私にやらせる気?こっちは任せたわ!私はこっちの奴らを片付けていくから!」


そう言うと俺に背を向け、また人々を切りさきはじめる。

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