愛する人 5

「あぁ任せてくれ。マリアの身体を返せ化物」


背後から剣を振り下ろした。

突然目の前がスローモーションになる。


左肩から右脇腹にかけて。

血が噴き出す。

驚き歪んだ顔をしたマリアが振り返った。



「・・・・なんで?」


「返せよ。お前がその身体に入ってちゃダメなんだ」


次は右肩から左脇腹へと切り裂く。



「止めてよ!・・・な、仲間じゃない・・・・」



その場に崩れ落ちる化物。



俺はそいつの顔を踏みつけると、


「バカか。俺とお前が仲間な訳ないだろ。

マリアの皮をかぶったモンスターが。くたばれ」



首と身体を切り離した。



血がドバーと流れ出る。


周りを見たら生徒達は誰も居なくなっていた。

逃げたんだろう。

そりゃそうだ。



両手でマリアの顔を持ち上げる。

死んでしまったマリア。

もう動いていないマリア。

もう喋ってくれないマリア。



・・・・悲しいのに涙は出ない。

俺はマリアに口付けをした。

もう生きてないのに。

何やってるんだろ。



・・・・守れなかった。

俺はマリアを守る事が出来なかった。



生首を抱え、外に出る。

ホテルへ帰ろう。

血だらけで生首を持ったまま、止まっている車へと乗り込んだ。


ホテルへ帰り、係員とハヤトの帰りを待った。

両腕にマリアの生首を抱えたまま。


1時間くらい経った頃、二人は帰ってきた。

・・・・呑気なもんだ。

仲間が殺されたっていうのに。



俺の姿を見た二人は、酷い表情のまま固まった。


「・・・・待ってたよ。おかえり」


「・・・・それは・・・・」


ハヤトが震える手でこちらを指差す。

何も出来ず、逃げ出したハヤト。

お前があの時居れば、マリアは助かったかも知れないのに。



「あぁ、マリアをモンスターから助けたんだ」


優しくマリアの頭を撫でる。



「まさか・・・返り討ちにでもされたのか?!」


返り討ち?

何言ってんだ、こいつ。



「違う。汚い化物からマリアの身体を取り返したんだよ」


そう。

愛しいマリアを化物から開放したんだ。




「ねぇ、係員。お願いがあります。

これを眞鍋さんに渡して下さい。

アリスみたくやって貰えるよう、頼んで貰えませんか?

俺もマリアを傍に置きたいんです。・・・・僕の大切な人だから」


生首をそっと係員に手渡す。



係員はいつものニタニタ顔のまま、生首を受け取ると


「かしこまりました。必ず眞鍋さんに渡しますよ」


それを持っていった。

ハヤトも腑に落ちない表情のまま、一緒に立ち去っていく。



マリアとしばらくのお別れ。

早く戻ってきてくれよ、マリア。

俺をひとりにしないでくれ。



愛してるよ、マリア。

これからはずっと一緒にいようね。

それまで・・・・・しばらくのお別れだ。

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