食い違い 8



「息がくさい、死ねよ」


理由なんて何でも良かった。

その時、俺が気に入らないと思えば、殺す。

それはありえないって?

いや、ありえるから。

だって俺には、それが出来る権限を女王様から貰ったんだ。

気に入らない奴を一人二人、多く殺した所で誰も罰を与える事は出来ない。



今日も、俺の気が済むまで人を殺す。

討伐を終えて、ホテルへ戻ると、汚い笑顔を浮かべた係員が出迎えてくれる。


「お疲れ様です。制服が汚れてますけど、大変だったんですか?」


黙っていればいいものを、余計な一言を付け加える。

こいつが真鍋さんの部下でなければ、すぐにでも殺していたのに。



「あぁ、大変でした」


たった一言、そう伝えると、係員の横をすり抜け、エレベーターに乗った。



「大変だったんですか・・・・、さて今日の討伐する人数は2人だったはずなのに。

抵抗されたのかな?」


背後から聞こえた声。

振り替えらなかったけど、きっとアイツの顔はニヤけてるに違いない。

そう思うと、イラついてくる。

目障りな奴め。




部屋に入ると、すぐに浴室へ向かう。

この汚い身体をどうにかしたい。

血だらけの制服を脱ぎ捨てると、勢いよくシャワーを浴びた。


愚民の汚い液体を、さっさと洗い流したい。

あんな汚い人種の身体に流れる液体が、俺の身体に付着してると考えるだけで、ぞっとする。



肌が赤くなるまで身体を洗い終えると、浴室を出た。

適当に身体を拭くと、ベッドの上に転がる。



「大変だった」


そうさっきは言ったけど、実際にはそんなに大変ではなかった。

ただ目に付いた無抵抗な愚民を殺すだけだ。

大変なはずがない。



それなのに、何故だか身体中がだるい。


「・・・もうこんな時間か」


気づけば俺は、眠っていた。

眠りについたというのに、ダルさが抜けきらない。

重たい身体を無理やり起すと、ベッドから起き上がる。



夕食を食べに行かないと。



口からも適度に栄養を補給しなくちゃいけない事はわかってる。

だからこそ、レストランに行きたいのだけど、なんだか足が思うように動かない。



どうしちゃったんだろ?



自分の身体の異変に、背筋にゾクっと寒気が走った。



怖いよ・・・・。

どうしたんだよ・・・・。

まだやりたい事はたくさんあるのに!

これからじゃないか!



本来なら、係員の顔なんて見たくない所なんだけど、

身体の異常を聞く為にも、その姿を必死に探していた。



こんな時に限って、あの男は何処にもいない!

役立たず!クズ!死ねよ!

いや、まだ死なれては困る。

係員・・・・・・生きる価値もない、気持ち悪い男だ。


だが、俺の顔を見たら、いつもの気持ち悪い笑顔でこう言ってくれ。

「ただの疲れですよ。2~3日休めば、元に戻ります」

頼むから。




レストランに入ると、すでに係員は着席し食事をしていた。

こっちは切羽詰っているというのに、人の気持ちも知らず呑気な野郎だ。

迷わず、真っ直ぐあいつの居る方向へと歩いていく。


真正面まで辿り着くと、



「はぁ・・はぁ・・・、身体がだるい。寝てもだるいんだ。

少し休めば治るんだよな?

疲れが溜まってるだけなんだよなぁ?!」


肩で大きく息を吐きながら、必死に係員に食らいついた。

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