死ぬと生きる 17

嬉しさから、その日の討伐にはより一層力が入る。


今日は実家に帰る日。

久しぶりに家族と会うんだから、一晩中眠らずに喋り倒してるに違いない!

そうなれば、夜中に人を殺しに行く事も出来ないだろうから、今のうちのたっぷり殺しておかなくちゃね!



校舎にいる人間、全てを殺して回った。

どんなに殺したって、バレる事はない。

なら、殺せばいい。

うるさい人間、全て殺してやるわ。


先生も生徒も。

どっちも関係ない。

アタシが首を吊った原因になった 物 、全てを殺してやる。



狩りを追えると、すぐにホテルへ戻る。

今日は実家に戻る日だから、時間をかけて汚れを洗い流したいし、たっぷり寝ておきたい。



満足がいくまで身体を洗った後、シャワーを浴び、ベッドの上に転がった。


今のうちにタップリ寝とかないと!

今日は徹夜になるからね!



しかし、睡魔は一向に来る気配がない。



・・・・あれ?おかしいわね。

今日はずっと寝てないから、そろそろ眠たくなるはずなのに。


夕方の6時に実家に送って貰う予定。

準備に一時間かけるとしても、数時間は眠る事が出来る。


ベッドに横になり、1時間・・・2時間と時間が過ぎていく。

いつも襲ってくる強烈な睡魔が、今日に限って全く起らない。

なんで、眠たくならないのよ!

いつもあの睡魔には迷惑してるのに、肝心な時には襲ってこない!

もう、なんなの!

3時間が過ぎた頃、眠れない苛立ちがピークに達し、部屋中の家具を全てグチャグチャに倒した。

どうしてそんな事をしたのか?と聞かれても、上手く言葉に表す事が出来ない。

ただ、我慢する事が出来なかったんだと思う。



「はぁ・・・はぁ・・・」


息も切れてる事だし、今ので軽い運動になったはず。

しかし、身体は多少疲れたものの、頭は冴えたまま、眠くはならなかった。



「なんで・・・・、眠たくならないの・・・・?」


思い通りにならないイライラに、髪の毛をかきむしった時、ピーピーとアラームが鳴る。

時計を見ると、針は5時を刺していた。

起きる為に合わせたアラーム。


一睡も出来なかったアタシには不要だったのかも知れないけど、その音を聞き冷静に戻る事が出来た。

準備しなくちゃ。

久しぶりに家族に会うんだから。


浴室に入り、シャワーを浴びる。

寝ていないから特に洗う必要はなかったんだろうけど、気分的にさっぱりしたかったからね。


シャワーを浴びた後は、鏡の前に40分近く座りっぱなし。

久しぶりに綺麗に髪の毛をドライヤーで乾かして、メイクをした。

少しくらい綺麗に見せたかったの。


いつもの鬼のような顔で、家族と会いたくはなかったから。




一番お気に入りの洋服に袖を通すと、念入りに鏡をチェックし、部屋を出た。

時刻は5時55分。

そろそろ実家へ送ってくれる車が、ホテルの前に止まっている事だろう。



ロビーへ向かうと、そこには係員の姿があり、


「あらミカさん。今日は一段とお綺麗ですね」


より一層ニタニタした表情でこちらを見ていた。

気持ち悪さ倍増。

それをスルーし、係員の隣をすり抜けつつ、



「あっそ。家まで送ったらすぐにホテルに戻っていいわよ。

明日は朝の9時に迎えに来てね。

・・・そういえば、うちの家族はアタシが今日帰る事、知ってるのよね?」


一番肝心な事を聞き忘れていた。

突然帰って、家族を驚かせるのもサプライズにはなる。

けど、全員外出してて家に入れないなんて、最悪な展開になるかも知れない。

実家に戻れるのは、たった1日。

限られた時間しかないのだから、事前に帰れる事を話しておくのが一番だろう。



「勿論、事前にお伝えしておりますよ。

さぁ車はもう準備しておりますので、参りましょう」


出入り口へと手を差し伸べながら、まるでアタシをエスコートするかのように歩き出す係員。

その姿を見て、



「えっ?!もしかして、アンタもついて来る気?!」


家族水入らずでいられると思ったのに、キモイこいつがついて来るとか耐えられない!

思わず、大きな声を出すと、



「えぇ、私も運転手と同様、家の前まで送りしますよ。

ミカさんのお世話をするよう、命令されてますから。

明日は9時にお迎えに行けばよろしいのですよね?かしこまりました」


気持ち悪い・・・・・。

本当は家まで付いて来られるのも嫌なんだけどね。

中まで入ってこないなら、まだいいか。


渋々、アタシが妥協してあげるという形で、2人で車へと乗り込む。



久しぶりに家族と会う。

最後に会ったのは、首を吊った日。

学校に行くと家を出た日以来、顔見てない。



死んだと思っていたアタシが、実は生きていた。

きっと喜んで出迎えてくれるに違いない!

だって家族なんだから!



すっかり日が暮れた景色を眺め眺めていた。

漆黒の翼を埋め込まれてから、アタシの存在を喜んでくれる人間なんて誰一人として居なかった。

真鍋と女王のせいで、アタシの扱いは散々。

キモイ涼とマリアだけが認められてたんだっけ?

意味わかんない!


やっとアタシが生きてる事、存在してくれる事を喜んでくれる人達に会えるのが嬉しい。

昔みたいに、一瞬でも普通の生活に戻れる事がとても嬉しいの。

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