死ぬと生きる 10



放課後、タイミング良く、教室に一人で居る亮に詰め寄る。


「ちょっと、どういう事よ!クラス全体に、アタシを無視するように命令したのがアンタだって、知ってるんだからね!」


ストレートに怒りをぶつけた。

すると、亮は噴出し、笑いながら、


「何言ってるの?そんな命令してないよ」


カバンを持ち、立ち去ろうとする。

アタシは亮の右腕を掴むと、



「都合が悪くなると逃げるの?わかってんのよ!アンタが首謀者だって!諸悪の根源だって!

男でしょ?いい加減白状しなさいよ!」



ここまで言ってるにも関わらず、相変らず亮はニタニタと気持ち悪く笑ったまま、


「俺は命令してない。お前を無視しようって決めたのは、クラスの奴らの意思だ」


腕を振り払うと、教室を後にした。

歩いていく亮の背後に、



「バカ!最低男!人殺し!」


罵声を浴びせる。

しかし亮は、振り向きもしない。



・・・・何よそれ・・・。

なんで皆、アタシの事、無視するのよ・・・・。

アタシが何したっていうのよ!!!


言いたい事はぶつけたはずなのに、アタシの怒りは収まらなかった。





翌日も、その翌日も、誰一人としてアタシと喋ろうとする人は居ない。

みんな、まるでアタシが見えないかのように、存在を無視し、喋り笑っている。



・・・このアタシが、一人ぼっちだなんて・・・・。


マイもミキも、格下のグループに入ったらしく、楽しそうに喋ってる。

後他に、一人ぼっちでいる奴といえば、見た目がキモイのばかり。



・・・このアタシが、あいつ等と同じなの・・・・?

嫌よ!



ドンっ! と思いっきり自分の机を叩くと、立ち上がり走って教室から出て行った。

誰かが追いかけてきてくれるのかも?なんて期待したけど、誰も止める者はおらず、



「何あれ?」


そんな言葉と、笑い声が廊下に響く。



・・・アタシが笑い者にされるなんて、いやよ!

絶対に嫌!許せない!腹が立つ!



・・・でも、教室には戻れない・・・・。

あてもなく、校舎を歩き回った。


また嫌な夢だ・・・・。

たっぷり寝たというのに、目覚めが悪い。

それも全て夢のせい。



「・・・・・寒っ」


全裸で寝たせいで、冷えたみたい。

お風呂にお湯を溜めつつ、シャワーで血を洗いながす。


パリパリに乾いちゃってるから、落とすのが大変だ。

だから、眠る前にシャワーを浴びたかったのに。

お湯が溜まり、たっぷり湯船に浸かった後、身体を拭き、髪の毛は乾かさないままレストランへと向かった。


昨日の夕ご飯を食べなかったのは、なんとか言い訳するにしても、

朝までご飯を抜くのは流石に怪しまれるしね。




レストランに入ると、すでに涼と係員が朝食を食べながら打ち合わせをしており、アタシはいつも通り少し離れた位置に座る。



「・・・納得出来ない!」


「・・・ですが・・・・」


「それにしたって!・・・・」


断片的に耳に入ってくる会話は、かみ合っておらず、会議は難航してるっぽい。



「じゃあ、何があったとしても俺は責任取るつもりはないんで。

貴方の意思で動いてください」


涼はややキレ気味でそう言い放つと、一足先にトレーを持ち、レストランを後にする。

あの命令口調は、何様?気持ち悪っ!

見た目もキモいながら、口調もキモイ・・・救えないわね。



しばらくすると、トレーを持った係員が不気味にニヤつきながら隣に立つ。


「おはようございます、ミカさん」


キモ!別に、わざわざ挨拶なんてしなくていいのに。

その言葉を無視し、アタシは朝食を食べ続ける。



いつもなら、係員の声を聞くだけでうんざりするのに、


「今日から、また任務は別々にする事になりましたから。

また一人でお願いしますね」


その魅力的な言葉に、アタシは食べる手を止めると、



「マジで?らっきー!」


その場で、アタシらしくないガッツポーズを決める。

それを見た係員は、また気持ち悪く フフ っと笑い、



「えぇ、他の隊が全滅状態で、上手く進んでないですからね。

あ、一人じゃ大変そうですから、私も付いていくので安心して下さい。では」


一足先にレストランを後にした。

最後の1行を聞き、軽くうな垂れながらも、また自由に人が殺せる事に、アタシは喜びを感じていた。

邪魔者は居るけど、まぁいいわ。

あいつの目なんて節穴だから、隠れてガンガン殺せる。

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