死ぬと生きる 4

刺激という物にはすぐに慣れてしまうのが人間って生き物で、どんどん行為は加速していく。

毎日、ジャージ、制服、カバン、靴とサナエの物は無くなっていく。

それを見て、うちらは


「え?またないの?どうしちゃったんだろ~・・・・フっ・・」


優しく声をかけてあげた。

だって周りの人達は全員何も声をかけてあげないのよ?

一人くらい声をかけてあげてもいいじゃない。


サナエから無くなっていったのは 物 だけじゃなかった。

次第に友達も一人、また一人と傍から離れていく。



そして最後には、一人ぼっちになった。

休み時間もお弁当を食べる時も、ずっと一人。

裏切り者なんだから、当然よ。

人を傷つけといて、他のグループで楽しく過ごそうって方がどうかしちゃってる!


それを見て、



「簡単に人を裏切るから、どこのグループに入っても、仲間から外されるんだよ」


アタシ達はそう言い笑うと、それまでずっと下を俯いていたサナエ突然顔を上げてこちらを見た。

久しぶりにサナエと、目が合う。



「キモイから、こっち見るんじゃねーよ」


そういうと、すぐに視線を机へと戻した。



「なんか目が合っちゃったし~、気持ち悪いから保健室にでも行こうかな~」


そんな事を言いながら、うちらは笑う。

それが、生きているサナエを見るのが最後で、翌日サナエは学校には来なかった。


別にサナエが学校に来ようが、休もうがうちらには関係ない。



「何休んでの?ズル休みなんじゃない?」


なんてうちらは笑う。

その日は何も起こらず、そのまま帰宅した。

サナエの事なんて、どうでも良かった。



そして翌日。

朝のホームルームで担任の口から出た言葉に衝撃を受ける。



「田村サナエさんが二日前に亡くなりました」




「・・・いい加減に話を聞けって!」


その言葉と同時に、左腕に軽い衝撃を受ける。

ハッとし顔を上げると、涼が右手で分厚い紙を持ち、左手はグーの状態。

恐らく、左手でアタシの左腕を殴ったのだろう。

軽くだったから、そんなに痛い訳じゃないけれど、右手で殴られた所を軽く擦る。



「えっと、何だったっけ?」


外の景色を眺めていたら、凄く懐かしい感じがして、気づけば昔の出来事を思い出していた。

思い出したところで、今更どうする事も出来ないのにね、なんで思い出したんだろ。

あんな、いらない記憶を。


涼はずっと気難しい顔をしていたから、目的地に到着するまで、どうせ声なんてかからないだろうって思っていた。

だから、ボーっとしてたのに、突然声をかけて、それに応答しないからってキレないでよ!

キモ男!



「マリアの事!次の街にもマリアは来ないってさ」


そういうと、あからさまに不機嫌な顔をする。

坊主頭でロボット足の無表情女と会えない事が、そんなに不満?

アタシなら、見ない方が嬉しく思うけど。

でも一応理由を聞いておこうか。

不機嫌ながらも、聞いて欲しそうな顔してるしね。



「なんで来ないの?来るって言ってたんでしょ?真鍋の野郎は嘘つきね!」


喋りながらも、食べる手は止めない。

常にモグモグ口を動かす。



「他の部隊の応援だってさ。どうやら知らない間に俺達以外の部隊が出来たらしい」


別の部隊の応援?

って事は、アタシ達以外にも、漆黒の翼を埋め込まれた人間が居るって事ね。

じゃあ、ちょっと楽出来るんじゃん!

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