死ぬと生きる 5



「部隊が出来て任務に向かわせたのはいいけど、街人に返り討ちにあってほぼ全滅なんだってさ。

俺達みたく、きっちりトレーニングをしないからだよ。

全く、役立たずのせいでマリアがそちらへ取られたって訳」


本当、役立たず。

全滅しちゃったら、アタシ達の負担が減らないじゃない!



「つーか、増やせばいいってモンじゃないだろ。

俺達が先駆者として、ここまで引っ張ってきたのに。

後から出てきた奴らにデカイ顔されると思うと、腹が立つ!」


涼の不機嫌は、マリアと会えない事だけじゃないみたい。


あれ?この景色は・・・・。


どんどん目的地に近づくにつれて、懐かしいと思っていた景色が、見た事がある景色へと変わっていく。

もしかして、次の目的地はアタシが住んでいた街じゃない?


涼の話は、右から左へと流れていき、アタシは景色に心を奪われていく。




「法律を素直に従う人間が居る反面、反乱を起そうと企む人間も増えてきてる。

俺達も返り討ちに合わないよう、気を引き締めないとな、ミカ」


「ねぇ!次の目的地って、ココなんでしょ?うわー!ビックリ。

ココって、アタシが育った街じゃない!懐かしい~!!!」



涼とアタシの声が重なった。


なんだ!次の目的地は、地元なんだ。

初めて行く土地なら、まだそこがどんな場所かわからないから、真夜中に人を狩る事に戸惑っていたけれど、

地元なら、道も知ってるし、どういう所なのか?も知っている。

今日から、狩りを再開出来るわ。

なら、もうパンを食べる必要はないわね。



両手を話すと、持っていたパン全てをあいている椅子へと放り投げる。



「・・・聞いてんのかよ、全くお前は気楽でいいよな」



アタシが喜んでいるのは、地元だから友達や家族に会えるからって理由じゃない。

人を狩れるから、よ。

誤解しないでちょうだい。


宿泊するホテルへ、車は無事に到着。


「任務は明日から行う。今日は自由行動・・・って言っても勝手に外出するなよ」


そう言うと、涼は一足先にホテルの中へと入って行った。



「はいはい~」


適当な返事をするアタシ。


何が偉そうに、勝手に外出するな!・・・・よ。

前の街で毎晩アタシが抜け出してた事に気づかなかった癖に。

そんな決まり守るわけないじゃない。

外出なら、全然するわよ!

それも今晩からね。

じゃないと、右手が痛くて眠れなくなるから。

仕方がないの。

アタシの意思じゃないわ。



カウンターで鍵を受け取ると、ボーイの後を追う。

部屋まで案内して貰う為だ。

2人っきりのエレベーター室内。



「ねぇ、涼の部屋って何処?隣とか?」


万が一、夜中に抜け出した時に廊下で鉢合わせするのは嫌だからね。

事前調査って奴!

声をかけると、それまでエレベーターの押しボタン側を向いていたボーイがこちらを振り向き、



「いえ、同じフロアですが部屋は少し離れております」


微笑んだ。

あら、カッコイイ男じゃない。

爽やかな笑顔が、何処と無くハヤトと似てる。

ハヤト・・・何してるのかな?

マリアと同じで、他の部隊の応援に回されちゃったのかな?


っていうか、ウザイ涼と隣同士じゃなくて良かった!

近いってだけで、鳥肌が立つわ!


あっという間に、宿泊するフロアに到着。

ボーイは部屋の中にアタシの荷物を置くと、そのまま去っていった。




外出するな!・・・つったって、暇よ。

何して過ごせっていうの?

あぁそうだ。

夜中の狩りに備えて、寝とこうかしら。

最近、思う存分狩った後に、強烈な睡魔が襲ってきて、血まみれのまま寝落ちばっかりしてたしね。


って、何だろう。

そんな事を考えてたら、また強烈な睡魔が・・・・。


アタシは意識が途切れ、足がふら付く中、必死にベッドに這い蹲る。

無事にベッドの上に乗れた瞬間、強制的に意識は途切れた。

まるで、電源をOFFにされた家電のように。

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