ミカ 4



ホテルに戻ると、アタシはすぐに自分の部屋に戻され、


「こちらの指示があるまで、食事以外で部屋から出ないように」


と、偉そうに命令された。



指示があるまで部屋から出るな、ですって?

有り得ない!

そんなの無理よ。


だって、そろそろ誰かを殺さないと、無くなった指が痛くて疼いてくるの。

でも、今外出をし、怒られるのもしゃくだし・・・・、仕方がない。



部屋の電話から、フロントへ連絡すると、


「ここから、ここまで!全ての料理をすぐに持ってきてちょうだい!

早くよ!1秒でも、は・や・く!」


メニューに書かれている物全てを、ルームサービスで頼んだ。

しばらくの間は、また食べて痛みを緩和するしかない。


本当なら、今頃討伐をし終えて、今晩の痛みの事なんて気にする事なく、ホテルへ戻れるはずだったのに!

予定が全て狂った!!

失敗したのも、全てあの高校のせい!邪魔した教師のせいよ!!!

いつもなら、上手くいっていたのに!!




日も暮れた頃、


コンコン。


部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

誰が来たのか?なんとなく検討はついているけど・・・・。


渋々ドアを開けると、廊下には怖い顔をした涼と係員が立っていた。



「・・・どうぞ」


本当は部屋の中に、こいつらを入れるなんてごめんだけど、拒んだ所で無理やり入ってくるに決まってる。

仕方がなく、彼らを部屋の中へ招いた。


偉そうに、ズカズカ部屋の真ん中まで歩くと、クルっとこちらを振り向き、



「用件だけ話す。本来なら、無実の人間に怪我をさした罪で、お前を討伐する所だったけど、

漆黒の翼が使える人間は、現在俺とお前の二人だけだ。

今ここで、お前が居なくなれば、俺しか居なくなる。

だから、次の街での討伐が終わるまでは、お咎めはナシだ」


まるで自分がアタシの持ち主であるか?のような口ぶりに、鳥肌が立つ。

何が、用件だけ話す よ。

キモチ悪い!

アンタなんて、最初に会った時は、ただの根暗なもやしだったくせに!


「なんで、次の街での討伐が終わるまで なの?

次の街では何があるっていう訳?」


次の街が、アタシにとって、なんなのだろうか?

気になり、質問してみると



「次の街で討伐が終われば、マリアが休暇から復帰する。

マリアが復帰した後に、入れ違いでお前が本部に帰り、罰を受けるってだけだ」



・・・何よ、それ。

アタシの都合じゃなくて、そっちの都合って訳?

自己中過ぎ!

しかも、罰って何よ!

また、指でも切ろうっての?

もう、やめて!あの痛みに耐えろなんて無理!!



「じゃあ、用件は伝えたから、部屋に戻るよ。

お前も今日は大人しく部屋で過ごすように」


涼は偉そうにそう話すと、ドアの方向へ歩いていく。

むかつく!その態度が気に入らない!



「何が罰よ!アタシは悪い事なんて1つもやってないわ!

校長を切ったのも、あいつがアタシの歩くのを邪魔したから切っただけ!

それの何が悪いってのよ!」


ドアへと歩いていく涼に向かって、吠える。

しかし涼は何も答えてくれない。



「無視してんじゃねーよ!キモ男!」


悔しくて、罵声を浴びせた。

だが、涼は結局何も言い返さないまま、部屋を出て行った。



ムカつく!

もう、これ以上罰なんて受けたくない!

アタシが何をしたっていうの?

アタシは悪くないんだから!



振り返ると、室内には何故か係員がまだ残っていた。

ニタ~っと、不気味に笑ったまま、こちらを見ている。



「用が済んだら、アンタも早く出て行きなさいよ!」


そう怒鳴ると、


「はい、お忙しい中失礼しました」


素直にペコっと頭を下げると、ドアへと歩いていく。

ドアノブに手をかけた瞬間、



「今晩はくれぐれも、お静かにお過ごしください」


意味深な言葉を吐くと、ニッタリ笑い、部屋から出て行った。



気持ち悪い!

アイツマジで生理的に無理だわ!


誰も居なくなった部屋で、アタシはまだ残されていたルームサービスに貪り付いた。

もっともっと食べなくちゃ!痛みから解放されない!


数時間、アタシは食べ続ける。

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