ミカ 3

「きゃああああっ!!!」


それを見ていた、女性教師が悲鳴を上げる。



「うるさいのよ!ブス!」


校長からカギ鉄鋼を引き抜き、蹴り倒すと、次は女性教師の左胸目掛け、左手を振り下ろした。

しかし、男性教師が女性教師の腕を引っ張り、ギリギリの所で、ソレをかわされ、

対象が居なくなった私は、左腕を勢いよく空振りさせると、前方へとよろけた。


「チッ!ったく、素直に殺されとけばいいものを!」



体制を立て直し、顔を上げた瞬間。

3人の男性教師が、アタシの両腕を羽交い絞めにする。


運動能力は、一般人より多少上回るものの、大の大人に羽交い絞めにされると、

身動きを取るのも難しくなり、



「おい!この女、様子がおかしいんだ!

押えるのを手伝ってくれ!

後、生徒を非難させろ!」


先生達の迅速な行動により、あっという間に何人もの男性教師が集まると、

アタシは地面にうつ伏せに寝かされ、全員で身体全体を地面に押し付けられた。



「何すんのよ!アタシが誰だか、わかってんの?

女王から直々に命を受けてるんだから、離しなさい!」


喋ろうとすれば、口の中に砂が入ってくる。

最悪!

アタシが欲しいのは、砂なんかじゃなくて、生きた人間の血なのに!


女王の名前を出しても、周りの大人達は、



「完全に頭がオカシくなってるぞ!重症だ!」



アタシの言葉になんて、耳を貸そうともせず、



「政府に連絡をするんだ!後、救急車を呼べ!校長が重体だ!」


テキパキと、それぞれが行動をする。


嘘・・・でしょ?

アタシが任務に失敗するなんて。


漆黒の翼を埋め込まれたアタシが、なんでもない平凡な人間に負けるなんて!

こんな人間達が、アタシの言う事を信じず、変人扱いするなんて!

屈辱だ。


1時間くらい経った頃。

相変らず、アタシはうつ伏せにされたまま、身動きが取れず、目をつぶっていた。


「遅くなってすみません!」


今朝聞いたばかりの憎たらしい声が聞こえてきたけど、無視。

アタシは目を開けなかった。

だって、目を開けた所で、ハヤトに会える訳じゃないから。


ねぇ、ハヤト。何処にいるの?

会いたいよ!

こんな訳のわからない組織の中で、アタシの生き甲斐は、ハヤトと一緒に居る事だったのに。

それなのに、突然アタシの目の前から消えて居なくなった。

どこに行ったの?何故消えたの?

どこかへ逃げたのなら、アタシの事も連れて行ってほしかった。

聞きたい事はたくさんあるの!

話がしたいの!



どうせなら、居なくなるのは、アイツの方が良かったのに。

・・・・・・・・根暗な涼の方が。



「・・・・そうですか。すみませんでした。

って、起きろ!ミカ!お前も謝れよ!」


その声と共に、 バシッ と頭を叩かれる。

屈辱。

こんなキモ男に叩かれるとか、罰ゲームだわ。



「何?別にアタシ、悪い事してないし。謝る気ないから」


目をつぶったまま、言い返す。

すると、



「はぁ~。なんで休暇に入ったのが、お前じゃなくてマリアなんだよ。

早く戻ってきてくれよ・・・・マリア・・・・」


囁いた後、何度もため息をついていた。



ため息をつきたいのは、こちらも同じ。

アタシだって、アンタと二人っきりで討伐をしなくちゃいけないなんて最悪だと思ってる。


っていうか、キモイ癖に、アタシと討伐出来る事をありがたいと思いなさいよね!



この日は、二人とも討伐せずに、ホテルに戻る事になった。

大人達にペコペコ謝る涼を横目に見ながら、アタシは先に車に乗る。



車内で、


「ったく、一人で討伐も出来ないなんて、お前は犬以下だな」


涼の嫌味が聞こえてきたけど、そんなの無視。

キモイ奴の声なんて聞きたくもない!

会話もしたくない!

顔も見たくない!

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