消せない傷跡 3

校舎の中に入ると、客室みたいな所へ案内された。

そこにあるソファに腰掛けると、すぐにお茶が用意される。


テーブルの上には、資料が用意されており、俺達はそれを1部ずつ手に取ると、パラパラ目を通す。


毎回学校内の人間全てを討伐するなんて、効率が悪い。

俺達の目的は、モンスターを討伐する事であり、学校に居る人間全てを殲滅させる事ではない。

なので、予め学校内でイジメを行った人物を調査して貰い、

そこから目ぼしい人物を討伐するという方法に、変更したのだった。




「調査を行った所、1~5年生のクラスに、イジメはありませんでした。

これは、潜入した調査員の方も確認しております」


生徒達に聞くだけでは、信用が出来ない。

もしかしたら、イジメた側の人間が、非道なやり方を行い、口止めしている場合だってある。

イジメの現場を見逃さない為にも、校舎には数百という数の監視カメラが仕掛けられており、

調査員と呼ばれる人間達が、それぞれ1クラスずつ担当をし、常に生徒の動きを監視し続ける。

そこで、悪口を言った人間や、イジメた人間を見つけると、すぐに捕獲し、我々に差し出すようになっているのだ。



「なんか、キモイよね~。常に監視され続けるとか、拷問過ぎ!

トイレにも行けないよ~」


そう言うと、ミカは舌を出す。

勿論、監視カメラはトイレにも仕掛けられており、トイレ内の映像も監視され続ける。



「仕方がないだろ。トイレなんて、格好のイジメスポットなんだから。

トイレだけ、監視カメラを外すなんて出来ないよ。

それと、キモイって言葉は、法律違反。

お前が堂々と違反してどうするんだ」


そう言うと、肘で軽くミカを小突く。

気づけば、俺達の関係も微妙に変化し、ミカに対して俺がこんな行動を取れるようになっていた。

そんな俺達を気にする事なく、マリアは黙々と、資料に目を通している。



校長は、そんな俺達を、横目でチラチラ伺うと、


「あのー・・・・、続けてよろしいでしょうか?」


額に汗を浮かべながら、引きつった笑いを浮かべていた。



「あぁ、すみません。続けて下さい」


軽く笑うと、


「あはは・・・、ありがとうございます」


安心したのか?、先ほどとは別の笑顔を浮かべると、ハンカチでゆっくり額の汗を拭う。



今まで、一番学校で威張っていた人間が、

俺達の前で、機嫌を損なわないよう、必死にご機嫌取りをする。


惨めな姿だ。


「6年生にまず、イジメがあるのか?匿名でアンケートをした所、ほぼ全ては無記入だったのですが、

1枚だけ文字が書かれた物がありまして、それをコピーした物を資料の3枚目に挟めてあります」


校長のその言葉を聞き、俺達は一斉に資料の3ページ目をめくる。

すると、そこには右端に小さく


「私はイジメられてます。助けて下さい」


と、筆跡で誰が書いたのか?わからないよう、不自然にカクカクとした文字で書かれていた。

誰が書いたのか?バレないよう、小細工をする辺り、俺にはよくわかる。

これを書いた人物は、イジメっ子に対して、相当怯えている。


その気持ちがわかる俺と、


「可哀相に・・・・」

「助けて下さいだって!ダッサ!」


自分勝手なミカの言葉が重なる。



「ミカ!お前、いい加減に言葉に気をつけろよ!」


軽くミカを叱ると、ミカはベーっと舌を出した後、口を尖らした。

本当に、内面がガキな女だ。




「あの・・・、話を続けます。

匿名でのアンケートだったので、誰が書いた物なのか?担任含めて、誰もがわかりませんでした。

監視カメラで見る限り、学校内でイジメられた記録もなく・・・・」



という事は、学校外でイジメてるという事だろうか?

校舎には監視カメラが付いてるから、そこを避けてイジメを行うなんて、陰険過ぎる。

イジメっ子をぶっ殺してやりたい!


その怒りから、俺は無意識に資料をグシャグシャと握り締めていた。



「次に我々は、イジメが本当にあるのか?確認する為、一人ひとりに面談をしました。

クラスでイジメがあるのか?

誰が誰をイジメているのか?

そこで4人の生徒から、ある供述を得る事が出来ました。

その4人の顔写真と名前は、4ページ目に記載しております」



そこで、ハッと我に返る。

校長の話はまだ終わってはいなかった。



・・・何やってるんだ俺、先走りすぎだ。




無意識にクシャクシャにしてしまった、資料を綺麗に伸ばすと、4ページ目を捲る。

そこに、4人の顔写真と名前、それぞれの情報が載せられていた。

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