消せない傷跡 2

車内では、3人ともいつも無言で、思い思いの行動をとる。

ミカは食事、マリアはアリスをケース越しになで続け、俺は寝てる。

今日も、目的地まで寝て過ごそうと目を閉じた時、


「ねぇ、涼」


隣から、マリアの声が聞こえてきた。

久しぶりに話しかけられた事に舞い上がった俺は、



「ふあいっ!あの・・・えっと・・なに?」


思わず、声が裏返ってしまう。

しかしそんな出来事に、突っ込みなんて入る事はなく、



「家族には、お別れを言ってきたの?またしばらく会えなくなっちゃうんでしょ?」


目線をアリスに向けたまま、ポツリと話す。



家族・・・・。

思わず、ゴクリと唾を飲む。

振られたくない話題だった。

つーか、まさかここで家族の話が出るなんて、思っていなかったし・・・。



俺に家族はもう居ない。

しかし、その事を今だに、マリアに話す事が出来ていなかった。

話すチャンスはいくらでもあったはずだけど、それでも言わなかった。


別に悪い事をした訳じゃない!

あの時、家族を討伐した俺の判断は間違ってはいなかった!

・・・・それなのに、何故か言い出せない。



「あぁ・・・、うん。言ったよ、電話で・・・昨日・・・うん・・・」


嘘をついた。

本当の事を打ち明けられず、そこに更に嘘を重ねる。



何やってるんだか・・・・。




「そっか・・・・。ごめんなさい、なんか気になっちゃったから・・・・、おやすみ」


マリアはそう言うと、目を閉じた。

いつもなら、移動中はずっと起きてるのに、珍しい行動だ。

昨日眠れなかったのかな?



「いや、別にいいんだ。ははっ・・・おやすみ」


俺もそう言うと、静かに目を閉じる。

しかし、マリアに嘘をついてしまった罪悪感で、心臓がバクバクしとても眠れる状況ではない。



なんとか、この場を気に抜ける事が出来たけど、次はどうする?

また嘘を重ねるのか?

1度嘘をついてしまえば、2度3度つくのは、同じってか?




「・・・・はぁっ・・・・」


ダメだ。

眠れない。


頭は完全に冴えていた。

眠れないまま、車は目的地へとたどり着く。




「ここは・・・・小学校?」


辿り着いた先は、小学校だった。

後から降りたミカも、



「えー?いきなり討伐なの?

だったら先に言ってよ!それなら、こんなに食べなかったのに!」


そう嘆くと、両手に持っている食料を、バサっと床に落とす。

あ~・・・、勿体無い。

まだ食べれる物を粗末に扱うなんて、本当にこいつは下品だ。



「・・・・・」


マリアに至っては、コメントなし。



ついて早々に討伐か・・・・。

別に討伐が嫌な訳ではないけれど、今日は長時間移動したのだから、ホテルでゆっくり出来ると思ったのに、考えが甘かったみたいだ。



俺達3人が車から降りた事を確認すると、運転手は自動でドアを閉め、車を駐車させる。

運転手は基本的に、車の運転しかしないので、俺達の任務が終わるまで、車の中で待機している。

今日は、真鍋さんと連絡を取ってないし、何をしたらいいのか?わからない。


つーか、こんな場所に3人でポツンと降ろされた所で、どうしたらいいんだ?


無言で3人、立ち尽くしていると、

一足遅れて、校舎から小太りのスーツを着たおっさんがこちらへ駆け寄ってくる。

目の前で立ち止まると、軽く会釈をし、



「お迎えが遅くなりまして、申し訳ありません。私がここの校長をしてますー・・・」


そう言いつつ、胸ポケットから名刺を取り出す仕草をし始める。



「いや、そういうのはいいです。早く本題に入りましょう」


別に、校長の名前を知る必要なんてない。

俺達は、ただモンスターを討伐するだけだから。


先を急かすと、



「あぁ、申し訳ありません!ここで話すのはアレですから、どうぞ中へ・・・」


そう言うと、校舎内へと案内をする。

皆、討伐される事を恐れ、俺達に頭は上がらない。

俺達の顔色を伺い、常に低姿勢でヘコヘコし続ける。



権力って素晴らしいな。

今まで自分より上だった人間が、簡単に跪くようになるのだから。

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