第117話人とモンスター16

気づけば、俺は以前立ち寄ったファミレスの前に居た。

自動ドアのガラスに、全身血まみれの、自分の姿が写る。

汚ねぇ顔だな・・・・、でもいい。

どうせ今綺麗にしたって、すぐに汚れるんだから。

ホテルに帰ってから、汚れはゆっくり落とそう。

気にする事なく、店内へとズカズカ入る。



「いらっしゃいま・・・・・・」


そんな俺の姿を見た店員の顔は、笑顔から一変し驚いた表情へと変わる。



「・・・・あの人、この前来た変な奴じゃない?」

「全身血まみれだけど、やっぱり頭オカシイんだ・・・・」

「ちょっと私、店長に言ってくる!」


いらっしゃいませを最後まで言わず、

ヒソヒソ話したかと思えば、一人は俺に何の断りもなく、奥へと走っていた。

失礼な店員だ。

店の教育がなってないんじゃないのか?

残されたもう一人の店員は、必死に笑顔を作っているつもりなのだろうが、完全に引きつった顔をしている。



「あの・・・・、少々お待ち下さい!」


沈黙に耐え切れないのだろうか?顔をひきつらせながら、チラチラこちらを見ている。

別に食事をしにここに立ち寄った訳ではないのに、俺は何を待てばいいのだろうか。



「待つ?何を?」


聞き返すと、



「あのっ!・・・その・・・・、今店長が来るので・・・・・」


アタフタしながら、訳のわからない事を抜かす。


店長が来るのを、俺が待っている。

なんの為に?


・・・・あぁ、そっか。

この前、俺の悪口を笑いながら話した事を、反省してくれているのか。

だから、俺の手を煩わせないよう、自ら首を差し出しに来る。

中々良い心構えだ。




「ありがとう」


たった一言。

礼を述べると、まず手始めに、目の前に居る店員の左胸に剣を突き刺した。




「きゃああああああああ!!!」


テーブル席の方から悲鳴が聞こえる。

どうやら、こちらを見ていたみたいだ。


・・・・うるさいなぁ・・・・。



悲鳴を聞きつけた店員が、厨房の奥から走って出来た。

お前も、早く殺されたいのか。

わかったよ、楽にしてやるよ。


心臓を射抜かれている事も知らず、倒れている店員を見ると


「・・・・どうしたの?!うわっ!」


傍に駆け寄っていく。

が、すでにもう遅い。

こいつはもう、死んでいる。



「・・・・あぁっ・・・・」


その 物 がすでに死んでいる事に気づいた店員は、声にならない言葉を発しながら、震えながら恐る恐る顔を上げた。

怯えた顔でこちらを見ているそれの首を、躊躇う事なく剣ではねる。


2匹目、討伐完了。




「きゃあああああああ!」

「逃げろっ!」



テーブル席から客が、まるで滝のように出入り口へと走って逃げていく。

おいおい。

何やってるんだ?



「食い逃げしてるんじゃねーよ、罪人が」


どんな理由であれ、金を払わず逃げるのは罪。

罪人には死刑を。


逃げようとする客全てを、剣で斬りつけた。

抵抗する事もなく、パラパラとモンスターは崩れ落ちていく。

斬り捨てられた時に上がる叫び声はあるものの、もう悲鳴は沸き起こる事はなかった。

客の事を、全て斬ったのだろうか?

チラっとテーブル席を見ると、震えながら椅子に座っている客数名と目が合った。

なんだ、まだ居るじゃないか、まともな人間が。

一般人に興味はない。

俺が殺したいのは、罪人だけだ。


すぐに目をそらすと、厨房へと歩いていく。

残りのモンスターを討伐する為に。

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