第106話人とモンスター 5
ホテルの前に車は無事に到着。
一人ひとり車から降り、最後に俺が降りた時、
「涼!」
俺の名前を呼ぶ、懐かしい声が聞こえてきた。
そちらの方向を振り返ると、万遍の笑みでこちらに手を振る母と目が合う。
なんで?何しに来た?どうして?
頭の中にグルグルと疑問だけが、浮かび上がる。
会いたくなかったのに・・・・・・。
そのまま無視してホテルの中へ入ろうとした時、
「あれ、涼のお母さんじゃないのか?」
お節介ハヤトが声をかけてくる。
バカ!余計な事言わなくていいのに!
「違う!人違・・・・」
否定しようとした時、
「久しぶり!会いたかったのよ!私、この子の母親です。
いつもこの子がお世話になってます」
血で汚れた俺に抱きつく母。
あーーーーーーー!!!何してるんだよ!!!
やり過ごそうと思ったのに!
つーか、家に居る頃は、「汚い!」とか言って、俺に触れるなんて有り得なかったのに。
今の俺は、例え血まみれでも抱きつく価値があるというのか。
・・・と、そんな事を考えた反面、母親に抱きつかれた事を素直に嬉しいと感じる自分もそこには居た。
「あぁ、涼・・・君のお母さんでしたか。
昨日は久しぶりに対面出来て楽しかっ・・・・」
また余計な事を言い始めるハヤトの声を、
「あああああああああああああ!!!!!」
叫び声でかき消す。
もうなんなんだよ!!
昨日は野宿して、家に帰ってねぇし!!
しかし、ハヤトの発言は聞いていなかったのか?
「この子って、クズでドジだから、チームの足を引っ張ってるんじゃないか?って心配してたのよ~。
でも、貴方みたいなしっかりした子が居るなら、私も安心して息子を任せられるわ~」
ベラベラ喋り始める。
クズでドジ?今の俺の姿を見て、まだそれを言うのか?
母の発言にイラだった俺は、手を払いのけると、ホテルの中へスタスタ歩き始めた。
入り口へ一歩入りかけた時、
「待って!アンタを迎えに来たの!1日くらい家に帰ったっていいんでしょ?」
母に力強く腕を捕まれた。
「・・・・忙しいから、無理だよ・・・」
先ほどの母親の発言にスネた俺は、視線をホテルの中へ向けたまま、腕を振り払おうとする。
しかし、尋常ではない母親の掴み方に、結局振り払う事が出来ないまま、ホテル外へと連れ戻された。
すると、再びお節介ハヤトが発動!
「涼。俺達の事は気にするな。
この街に居る間は、自宅から任務先に通っても構わないから。
お母さん!家までこの車で送ってもらって下さい。
制服は血で汚れちゃってるし、その姿で自宅まで帰るのは大変だろうから」
車まで走ると、運転手に交渉をし始める。
あーーーーーー!余計な事しなくていいのに!!!
「ダメだ!もしかしたら、真鍋さんから連絡が来るかも知れないし!」
必死に抵抗するが、
「それなら、俺が受けるから安心して」
「折角だし、この車で帰りましょう!さあ乗るわよ」
二人の押しに負け、無理やり車の中へ押し込められる事に。
違う!家に帰りたくないだけなのに!
そんな考えがあったけど、正直母がホテルの前に居て名前を呼んでくれた時、一瞬嬉しかった。
ここまでわざわざ、俺に会いに来てくれたんだ!って、少し喜んだ部分もあったんだ。
もしかしたら、母親にまた、愛して貰えるかも知れない!・・・・そんな期待が少しずつ膨らんでいた。
そんな嬉しかった気持ちを、母親に伝えようと思い、勇気を振り絞り口を開こうとした時、
「母さん・・・・、あのさっきはうれ・・・・」
「・・・・ねぇ、給料が振り込まれなくなったんだけど、どういう事?」
先ほどのニコニコ顔から一変し、まるで虫を見るかのような目で俺を見ている母と目が合った時、背筋が凍りついた。
あれ?
母さん・・・・・・・、どうしちゃったの?
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