第80話改革 1

いやよ・・・・、なんでアタシがこんな目に合わなくちゃいけないの?

だって!罪は償ったじゃない!

たくさん謝ったし、それにあの日アタシは、自分をー・・・・・。



逃げよう!ここに居たらダメなんだ。

立ち上がり、外の世界に逃げようとしたその時、無表情の女王が目の前にやって来た。



「何しているの?行くわよ」


たった一言。

それだけを言うと、スタスタと奥へと歩いていく。



嫌だ!行きたくない!



歩かず、その場に留まっていると、女王のお付きの兵士達が、私の両脇へとやってくる。

両腕を掴むと、無理やり引っ張り、歩き始めた。



なんで、アタシなの?!

こんな役目、涼とかマリアにやらせればいいじゃない!

だって、あいつら。

完全に、女王や真鍋の考えに 洗脳 されてるんだから!



こちらを見向きもしなかった女王は、扉の前まで辿り着くと、突然こちらを振り返った。

いつもと違う。

まるでゴミでも見るかのような、冷たい目でこちらを見ると、



「わかってるわね。失敗したら、アンタの足の指を1本ずつ引きちぎるから。

真面目にやる事、いいわね?」


アタシの返事なんて聞く事なく、言いたい事だけ話すと、ゆっくり扉を開いた。



足を引きちぎるなんて、国を収める女王が言っていい事な訳?!

狂ってる!

こいつも、真鍋も!



扉の先には、数台のカメラと、必要最低限の人間がそこには居た。

皆、固唾を飲み、こちらを見ている。



「さあ、始めましょう。この国が生まれ変わる儀式を」


さっきまで、私に向けていたような、冷たい表情から一変し、

万遍の笑みで、そこに居る人たちに微笑む。



何が生まれ変わる儀式よ。

アンタがやろうとしている事は、国民を奈落の底へと落とすだけなのに。



それは、アタシと女王と真鍋、他数人しか知らない、極秘事項。

恐怖政治の幕開けだ。


モニターの前に座ってから、1時間が経過。


「何も映し出されないまま、終わったりして。

真鍋さんの言う事だ。当てにはならない」


いつも良い子ちゃんキャラのハヤトが、悪態をつく。

最近のこいつは、どうかしている。

まるで、真鍋さんや女王様に対して批判をする事で、自分のアイデンティティを確認しているみたいだ。



「きっと忙しいのよ。あの人は嘘はつかないわ」


マリアは目線を逸らす事なく、何も映っていないモニターを凝視している。

そして俺は・・・・・、



「そうだよ、きっと忙しいんだ。

そもそも、何時までにモニターを見ろ なんて言われていない。

俺達が勝手に、朝飯食った後からココに居座り続けているんだ。

それに対して文句を言うなんて、お門違いもいい所だろ?」


ハヤトに対して、牙を向いた。

すると、そんな俺の態度にイラついたのだろう。

ハヤトは、キッと俺を睨み付けると



「・・そうだけど・・・・。

それにしても、おかしいだろ?!

僕達に モニターの前で待っていろ と言いながら、時間を指定しないなんて、バカにし過ぎている!

あの人は、僕達を 管理 する人間なんだ。

もっと、誠意ある対応をー・・・・」


グダグダと、管を巻く。



「あー・・・、うるさい。

最近のお前はオカシイよ。

口を開けば、真鍋さんや女王様への文句ばかりが囁いている。

昔は違ったじゃないか?もっと、真鍋さんを信頼していた。

何があったんだ?」



「オカシイ?それは、君たちの方だ!

女王様や真鍋さんのやろうとしている事に、疑問を持たないのか?

自分達の権力を振り回し、大量虐殺を繰り広げる彼女達は、人間の皮をかぶった悪魔だ!」



「悪魔?なんて事を言うんだ!

俺は真鍋さんのお陰で、生きる場所を得る事が出来たっていうのに・・・・!」



俺とハヤト。

お互いが自分の意見を曲げず、言い合いがヒートアップしていったその時。




「しっ!静かにして!モニターに何がが映ったわ」


怒鳴る訳でもなく、いつもの調子でマリアが口を開いた。

言い合いをとめられた訳ではないのに、マリアのたった一言にお互い ハッ とすると、モニターに視線を移した。

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