第81話改革 2

「・・・・女王だ・・・・・」


最初にモニターに映ったのは、女王様の姿だった。

それを見たハヤトの顔は、どんどん歪んでいく。

そこまで露骨に嫌わなくてもいいのに。

所詮、ハヤトは自分を特別扱いしてくれないと、相手を攻撃しバッシングする 奴ら と同じ種族の人間なんだ。

俺達、 弱者 気持ちなんて、わかるはずはない。

理解をした振りをし、自分を 良い子 に見せたいだけんだ。


なら、お前は文句だけを言っていればいい。

そして、お前も 処刑 されてしまえばいいんだ。



モニター越しに見た女王様の表情は、まるで重たい荷物でも落ちたかのような清々しい表情だった。

それから察するに、これから起る事がなんとなく予測出来る。

きっと、以前話してくれた アレ が実行されるのだろう。


それを、俺は待ち望んでいた。

やっと変わるんだ。

この世界が。


なら、何故 ミカ が連れてかれたのだろう?

ミカなんて、俺達の中で一番 アレ とは正反対に位置する人間なのに。

ここで考えていたって、わからない。

とりあえず、モニターを見るとしよう。


俺は、考える事をやめ、視線をモニターへと再び映した。




「ごきげんよう、愛する国民の皆様。

しばらく皆様の前に姿を現す事が出来ず、申し訳ありませんでした」



「何が、愛する国民の皆様 だ。

国民を大量に虐殺しといて、よく言うよ」


イチイチうるさい奴。

俺は、ハヤトを睨み付けると、



「黙れよ、女王様の話が聞こえないだろ?

大量虐殺って言うけれど、相手はただの国民じゃない、犯罪者じゃないか。

犯罪者を裁いて、何が悪い?

今までのこの国は、犯罪者に甘すぎたんだ」



すると、ハヤトも言い返しはしないものの、俺を睨み返してきた。

今の俺達は、話し合いをした所で、同じ事の繰り返し。

ただの水掛け論になる。


そんな下らない話し合いをする位なら、女王様が何をやろうとしているのか?話を聞く方が重要だと互いに思ったんだと思う。

だって、恐らく女王様が今から話そうとしてる事は、これからの俺達の人生に大きく関わってくる物だと思うから。



それを物語るか?のように、マリアは俺達の事なんて、まるで見えていないか?のように、モニターを食い入るように見つめていた。


「先日、法律を改定して以来、犯罪は半分に減りました。

それにより、真面目に生活している国民の皆様は、安心して暮らせるようになった事でしょう。

愛する国民の皆様が、安心して暮らせる国に生まれ変われる事を私は嬉しく思います」



・・・・なんて、心優しいんだろう。

俺達 弱者 の気持ちを、女王様は理解してくれている。

俺は、そう思った。


しかし、ハヤトの顔はどんどん引きつっていく。

俺とは、違う印象を受けたみたいだ。


マリアは無表情だから、何を考えているか?わからない。

でもきっと、俺と同じ事を考えてくれている・・・・そう信じたい。




「今まで、我が国は犯罪者に対しての処分が 甘かった ように思います。

その甘さが、犯罪者を増やし、治安を悪くしていきました。


おかしいとは、思いませんか?

真面目に暮らしている人々が、犯罪者のせいでどんどん苦しんでいくなんて。

私は、そんな現実が許せません。


やり直す為のチャンスに甘えるなんてー・・・・・許せない・・・・・」




その言葉を言い放った後、なんとなく女王様の表情が変わった気がした。

今までの清々しい笑顔はあるものの、なんとなく 目 が鋭く、不適な笑みに変わったような・・・。





「本日より、新たな法律を設けます。

心優しい人たちが、もっと気楽に生きられる世界にする為に。

そして、心無い人たちが、一人でも多くこの世界から消えてなくなる事を祈って。


今から、他人の悪口を言った者、イジメた者はその場で極刑とする。

他人の気持ちなんて考えず、暴言を吐く輩は、その命を持って罪を償いなさい」



そう言い終ると、女王様は大きな口を開け、ニヤリと笑った。

その姿に、俺は思わず息を飲む。

こんな表情をした女王様を見たのは、初めてだ。



「ありえない!そんな事間違えている!

悪口を言った者?イジメた者?そんなの受け取り方で、誰だって加害者になるのに!

どうやって、見分けるって言うんだ?!」



ハヤトは、取り乱していた。

俺はハヤトの事は嫌いだけど、あいつの言う事にも一理ある。

それは、どうやって悪口を言ったのか?イジメたのか?を調べるのか?という事。

処刑をするのは、恐らく俺達4人。

その4人で国民全員を取り締まるなんて、不可能だろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る