第78話帰る場所 6
この自主訓練は一ヶ月続いた。
その間、真鍋さんとは一度も顔を合わせていない。
信じているとはいえ、こんなにも音沙汰がないと、流石の俺も、
「どうしちゃったんだろ・・・・、真鍋さん」
心配になる。
「あの女は、自分勝手なのよ!
アタシ達の事、なんだと思ってるんだか!」
いつもは貶してくるミカが、俺の言葉に乗っかるなんて、珍しい。
「また、僕達みたいな人間を、造り出しているのだろうか・・・・」
難しい顔をしている、ハヤト。
「大丈夫よ。真鍋さんを信じましょう。
私達には、あの人が行う事が全てなのだから」
一ヶ月間、放置されていたっていうのに、自分の信念がブレないマリアは、
もう流石としか、言いようがない。
そして、ようやく彼女は姿を現した。
いつもの笑顔とハイテンションな口調で、
「皆!お待たせ!やっと完成したわ!」
オーバーなリアクションをとりながら話す姿も、何1つ変わっていない。
「何が、完成したんですか?
今までモンスターの討伐は止まっていましたが、モンスターはどうなっているんですか?」
すかさず、質問をするハヤト。
すると、真鍋さんは両手を大きく広げると、
「塀よ。この水の国を囲む、高い塀が完成したの。
もう簡単に、他国へ向かう事は出来ないわ。
皆許可証がないと、自由に出歩けない」
微笑む。
何故だろう。
いつもの微笑みとは違う。
今日の真鍋さんには、 怖さ を感じた。
「そんな塀なんて造って、どうすんの?
まさか、許可証を高値で売って、お金儲けとか?」
真鍋さんが現れた途端、露骨に嫌そうな顔をするミカ。
お金儲け?
それはない。
だって、前に女王様が俺にこの件について、少しだけ話してくれたから。
予想通り、
「お金儲けなんてしないわ。
そんな事をした所で、焼け石に水。
他国へ行くのにお金がかかるなのら、国民達は水の国に篭って、出入りはしないでしょうね」
真鍋さんは、ミカの予想をバッサリ切り捨てた。
「じゃあ、何で塀を造った訳?
しかも、一ヶ月もアタシ達を放置するとか、どういう事よ!」
女王様の事も、真鍋さんの事も嫌いな癖に、
放置されたら、されたで怒るとか、メンドクサイ奴。
「塀を造った意味?あるわ。
明日から、また新しい法律が出来る。その為に造られた、塀よ」
女王様も言っていた。
新しい法律を造る、と。
それは、一体何なのだろう?気になる。
「新しい法律?また、出来る訳?
全く、あの女王は何がしたいんだか・・・」
ミカは、大きなため息をついた。
ハヤトも、難しい顔をしている。
マリアは、相変らず無表情だ。
「女王様がやりたい事も、新しい法律も、明日になればわかるわ。
皆はその様子を、モニターで確認して頂戴。
談話室に用意しておくから」
真鍋さんは、俺達に明日行われる事を教えてくれないみたいだ。
まぁ、いつも 隠し事 ばかりだから、気にはしていないんだけど。
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