第72話目の前に居る者 7
「いずれ、この世の中は、弱者が死ぬ事を心配する事なく、
伸び伸び生きていける世の中に変わるわ。
今は、そこに辿り着くまでの、準備の期間。
完璧な世の中を作るには、犠牲が必要なの。
カードを盗んだ子も、その犠牲となった一人」
犠牲・・・。
やっぱり、俺達みたいな人間は、犠牲になってばかりだ。
「その犠牲を無駄にしない為にも、今を乗り切って、新しい平和な世の中を、私と一緒に造って頂けるかしら?」
新しい平和な世の中 と 犠牲。
二つの言葉が、頭の中をグルグルと駆け巡る。
「俺は・・・・、新しい平和な世の中が訪れて欲しいです。
俺みたいな気持ちになる人間が、増えて欲しくないから」
もう、死ぬ事だけを考えなくてはならない世界なんて、壊してしまおう。
新しい、平和な世界を作りたい。
女王様と会話して、俺の気持ちは少しずつ変わっていった。
「ありがとう。必ず、新しい世界を、一緒に造りましょう。
今は辛いけれど、きっと、もっと時間が経てば、
貴方がやった事を、感謝してくれる人が現れるわ」
俺の存在に感謝してくれる人?
そんな人、現れるのだろうか?
今まで、生きてる事を否定され続けていた俺が・・・・。
もし、現れるとしたら、嬉しい。
単純にそう思った。
女王様が病室から出て行った後、不意に脳裏にある事が浮かんだ。
モンスターについては、理解できたけれど、魔王 って何なのだろう?と。
凶悪な事件を犯した人を、そう呼ぶのか?
そうだとしたら、魔王を倒すのは簡単そうだな。
だって、相手はいつも、鎖で両手足を繋がれているのだから。
反撃される事なく、簡単に殺す事が出来る。
魔王を倒せば、英雄になれる。
そう、真鍋さんが言っていた。
なら、俺は将来、英雄になる事が出来るって事なのだろうか?
自分は鳥籠の中に入った、鳥だと思っていた。
しかし、ただの鳥ではない。
英雄になる事を約束された、エリート。
弱者で負け犬だった俺は、誰からも感謝され愛される存在になれる。
そう思うと、何故か笑えて来た。
鳥籠の鳥でも、悪くは無い。
だって、将来が約束されているのだから。
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