第50話討伐 6

処刑場へ続く、扉の前にたどり着いた。


俺は、右手首に意識を集中する。



「あ~、ヤダヤダ。マジ気持ち悪い。やりたくないし・・・!」


後ろでボヤくミカ。


全く、真鍋さんは何を考えているんだ!

ミカなんて居ても、ただの足手まといなだけだなのに!


それに、ハヤトもだ。

マリアもきっと、ハヤトみたいなお荷物が居て、苦労しているに違いない。

マリア・・・・大丈夫かな?




「嫌ならやらなければいい。俺が一人で殺るよ」


ゆっくり扉が開かれると、そこには、手足を拘束具で繋がれた囚人が、室内にギッシリ詰められていた。

皆俺を、怯えた目で見ている。



「いい眺めだ。抵抗出来ないこいつらを、八つ裂きに出来るなんて」


戸惑う事なく、モンスター達に剣を振り下ろす。



「死ねよ。人の気持ちなんて考えず、犯罪を犯すバカ共ら」


ミカはやはり、一匹も倒す事が出来ず、呆然と立ち尽くしていた。

やっぱり、こいつ、ただの役立たずじゃんか。


どうせ、ハヤトだって、モンスターを一匹も狩るなんて出来ていないだろう。

そんなもんだ。



俺には、目の前に居る囚人を人間とは思えない。

人間の形をした化け物。

人を傷つけても、何とも思わず、自分さえ良ければ、それでいい!そんな甘い考えをしたカスだ。




法律が変わった事により、討伐するモンスターが増えた。

必然的に、労働時間も延びる。


例え時間が延びたとしても、俺は、モンスターから血を吸収しているから、特にダメージは無かった。

いや、むしろ、倒せば倒すほど、力が漲ってくる。

時間を忘れ、モンスターを討伐する事に陥っていた。




「ねぇ、貴方。そろそろ休憩にしたらどうかしら?」


聞きなれない女の声が聞こえた・・・・・気がした!

しかし、俺は手を止めず、モンスターを狩り続ける。



すると、俺は誰かに左腕を捕まれた。

囚人は手足を拘束しているから、俺に触るなんて事は、出来ない。


じゃあ、誰だ?!



捕まれた左腕の方を振り向くと、そこには見知らぬ綺麗な女性が、ニッコリ微笑みながら立っていた。


「貴方の事、真鍋から聞いているわ。お疲れ様」


見知らぬ女性は、俺に向かって、微笑んでいた。



「あ・・・、ども・・・」


誰なんだ?真鍋さんが俺の事を話すなんて、なんか不思議・・・・。



「そろそろ、お昼休憩にしてはどうかしら?

漆黒の翼に血を与えれば、力は漲るでしょう。

でも、胃の中は空っぽ。

食べ物から栄養を補給しなくちゃ、身体が持たないわ」


なんか、口ぶりからして、漆黒の翼について詳しいのか・・・?



「はい、わかりました・・・」


手を止め、引き返そうとした時、



「コレ、使って下さい。顔に血が飛んでしまっているから」


女性は俺に、ハンカチを手渡した。

こんな事、異性からされるなんて・・・・初めてだ。

しかも、高そうなハンカチ。

それを血で汚してしまっていいのか?迷った俺は、それを受け取れずにいた。

すると、



「気にしないで、使って下さい。 では、私はこれで」


無理やり、俺の手にハンカチを押し込めると、女性はお辞儀をし、その場を去った。



誰なんだろう・・・・・?

呆然と、立ち尽くす俺。



すると、足に鈍い衝撃が走る。



「早く、ご飯食べに行くわよ!っていうか、アンタ汚いから、シャワーするまで近寄らないでね」


ミカが俺の足を蹴ったのだった。



「あ・・・、うん」


我に返り、シャワー室へと歩き出す。

しかし、頭の中は、先ほど出会った女性の事でいっぱいだ。



俺に優しくしてくれた。

数少ない女性・・・。


俺の事、見た目で差別しなかった、彼女の事が気になって仕方がない。

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