第49話討伐 5

食堂へ行くと、まだ誰も居なかった。

トレーを受け取ると、適当に場所を見つけ、座る。


すると、しばらくして、マリアも食堂へとやってきた。

トレーを受け取ると、少し離れた位置に座り、食事を始める。



・・・・昨日のおにぎりのお礼を言わないと・・・・。

席を立とうとしたその時・・・・。




「涼!!聞いたか!!大変だ!法が変わった!!」


血相を変えた、ハヤトがやってきた。

その後ろにはミカの姿も見える。


こいつらは、一人じゃ行動出来ないのか?

いつも、二人セットだ。



「あぁ、真鍋さんが朝何か言っていたような・・・・」


あの時は、寝ぼけていたし、用件を話す事で精一杯だったから、気にも留めていなかった。

しかし、改めて思い返してみたら、何か凄い事を聞いたような気が・・・しなくもない。



「これからは、処罰が重たくなる。

軽犯罪でも 犯罪 と名がつく物を犯せば、全て死刑になるらしい。

死刑って事は・・・・わかるよな?

僕達が、殺すって事だ・・・・」



「へぇ~、そうなんだ」


俺には興味がなかった。

だって、俺、犯罪なんて無縁だし。


一人殺しちゃえば、二人殺すのも、十人殺すのも同じだ。

もうすでに、その感覚は麻痺している。



「へぇ~じゃないわよ!アンタわかってる?事の重大さが!

今度から、万引きした人も、死刑になるのよ?有り得ない!どうなってるのよ!」


ミカもハヤトと同じ、酷く慌てていた。

もしかして、ミカは万引きした事があるのか?

全く、バカバカしい。



「万引きして死刑になるのなら、万引きする人が居なくなって、お店側は嬉しいんじゃない?」


俺がそう言うと、



「アンタ・・・・やっぱ、頭おかしいわ・・・」


ミカはお手上げのポーズを取った。

俺の頭がおかしいなら、万引きした奴はもっと頭おかしいだろ。

だって、勝手に物を盗むのだから。


すると、



「貴方達!喧嘩は止めて、早く朝食を食べて頂戴。

法が改定したから、予定が詰ってるの!


ハヤト、ミカ。

貴方達も、今日から強制的にデビューしてもらうわ。

人手が足りないから。


そうねぇ・・・・、涼とミカ、ハヤトとマリアで組んで、モンスターを討伐する事。

伝達は以上!


さぁ、早く食事して、処刑場へ向かう!」



用件だけ、ベラベラ喋ると、真鍋さんはドコかへ消えていった。




「えーーー!最悪ーーー!

涼と組むとか、罰ゲームだわ」


ミカが、大げさにうな垂れるリアクションを取る。

それは、こっちの台詞だよ。


俺だって、嫌だし、最悪だ。

マリアと一緒に、討伐したかったのに・・・。




「僕が・・・殺す・・・・」


一方のハヤトは、放心状態。

まぁ、そうだよな。

こいつは、今まで生ぬるい環境で生きてきて、人の汚い面なんて知らないのだから。

実戦デビューの時も、腰を抜かしたまま、何も出来なかったし。




マリアは、淡々と朝食を食べていた。

一緒に戦えないとか、残念だ。

ハヤトが相方なんて、マリアの負担が増えるだろうに・・・。



俺も、再び自分の席に座ると、朝食を食べ始めた。

法が変わった事により、モンスターは何十倍、何百倍に増えるだろう。

それに備えて、とにかく食べないと。

そして、たくさんモンスターを倒さないと。

漆黒の翼に血を与えてやらないと・・・・・。

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