第48話討伐 4

部屋に閉じこもって、どの位時間が経ったのだろうか?



コンコン・・・・。



扉をノックする音が聞こえた。


どうせ、ハヤトだろ?

優等生キャラのあいつが、フォローしにきたに違いない。

寝た振りをし、無視しようとした時、



「私・・・マリア。さっき、ありがとう。これ食べて」


確かにそれは、マリアの声だった。

マリア?なんで俺の部屋に来たの?

別に、さっきはマリアをかばった訳じゃなく、

ミカと自分の母親が重なっただけなのに・・・・。



「待って!俺・・・違うんだ!」


誤解を解く為、急いで扉まで走っていき、開けたが、すでにマリアの姿は無かった。

扉の下に視線をやると、そこには、おにぎりとジュースが無造作においてあった。



「俺の為に、持ってきてくれたんだ・・・・ありがとう」


それを手に取ると、扉を閉める。



もしかして、さっきの出来事で、俺もマリアを傷つけた・・・・?

そんなつもりじゃなかったのに。


気まで使わせてしまった・・・・。



おにぎりを一口かじる。



美味い・・・・。

ただの、米と塩の固まりなのに、全然美味い・・・・。



俺もマリアを傷つけた。

なら、俺もモンスターなのか?


ごめんなさい、マリア。

俺も、ズカズカと君を傷つけてしまって。



いや、きっと俺もモンスターだ。

脳にIDチップを埋め込まれた俺なんて人間じゃない。

もう、人間になんて戻れないよ。



寮母さんも、俺みたいなのが息子なんて、嫌だよな。

もう、寮母さんみたいな母さんが欲しいなんて思わない。


ごめんなさい、寮母さん。




翌日、気持ちよく眠っていたにも関わらず・・・・、



「おはよう!涼君!!起きて!!」


騒がしい声のせいで、目が覚めた。

目の前には、いつもに増してご機嫌な顔な真鍋さんがおり、



「聞いて!法律が変わったわ!悪人が世の中から消えるのよ!忙しくなるわ!

ハヤトとミカも狩りに出さないと!」


アレコレブツブツ言っている。



「あぁ~、おめでとうございます~」


まだ完全に目が覚めていない俺は、真鍋さんの言った言葉にピンっとくる訳もなく、寝ぼけていた。



「全く、早く目覚ましてよ!それより、涼君、私に用件って何かしら?」


まだ、起されてから1分も経っていないんだ。

そんなにすぐにシャキっと出来るはずはないのに・・・!


って、用件?

そうだ!重要な事を真鍋さんに言わなくちゃいけなかったんだ!


眠たい目をこすりながら、ベッドから起き上がると、



「あの、真鍋さん。給料の事なんですけど・・・・」


話を切り出した。



「え?何?給料なら、払ってるけど・・・・少ない?」


「そうじゃなくて!・・・その、給料は絶対に親に手渡さなくちゃいけないんですか?」


「いえ、そんな事はないけど、どうかした?」



よし!それならば・・・・・!



「あの!その給料は、親に渡さずに、俺に直接手渡して貰えませんか?

・・・あのその・・・・理由は・・・その・・・」



理由は言えなかった。

というより、どこから話せばいいのか?わからなかったのだ。


それを察したのか?真鍋さんは、



「あぁ、いいわよ。じゃあ、今月分から涼君に手渡すわね。他に用件は?」


軽く了承してくれた。

良かった!


「いえ、他にはないです」



それさえ、了承してくれれば、他に文句なんて何もない。



「そう、じゃあ行くわね」


真鍋さんは、アッサリ部屋を出て行った。

よし・・・これで、母に金は流れない。

俺が稼いだ金は、俺の物だ。

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