第47話討伐 3

「ぶっ!何あれ?見て!変な子がいる!」


俺がモヤモヤ考えていると、ミカは入り口の方を指差し、笑い始めた。

振り返ると、そこには夕食をトレーに乗せたマリアが立っていた。



「マリア!こっち!一緒に食べよう!」


立ち上がり、マリアに手招きすると、



「え?ちょっと!何してんの!あんな変な子、こっちに呼ばないでよ!」


ミカが怒り出す。



「いや、ミカ。あの子、俺達の仲間。漆黒の翼の使い手だから」


ハヤトが説明しても、



「えぇ?!あれが私達の仲間?有り得ない!無理無理!仲良く出来ないわ!」


マリアを拒否するミカ。

すると、このやり取りが聞こえていただろうマリアは、

俺の手招きを無視し、離れた位置にトレーを置くと、座り、食べ始めた。

それを見ていたミカは、



「ふ~、セーフ!良かった~!

あんな子が目の前に居たら、ご飯がマズくなっちゃうわ。

っていうか、アレ、どうしたの?失敗作?キモイんですけどー!」


マリアの事を、貶し始めた。


マリアの事、何も知らない癖に。

こいつらはいつもそうだ。

相手の事を知ろうとはせず、見た目や直感で、相手が傷つくとかそういう事を考えずに貶す。



他人の心に深い傷を負わせるモンスター。



実戦デビューすらこなせないこいつが、マリアを侮辱するのが許せない。



俺はテーブルを ドン っと叩くと、



「お前なんかより、マリアはずっと凄いんだ!強いんだ!

もう実戦デビューもして、モンスターも狩っている!

お前なんて、文句ばっかりで、何も出来てない癖に!

謝れよ!マリアに!」


ミカに食い下がった。

学校に通ってる頃、俺は石川達に歯向かう事は出来なかった。

・・・それは、あいつらが怖かったからだ。



でも、今は違う。

俺は、ミカより勝っている。

怖くない!ミカなんて!


「何よ!見た目ヘナチョコな癖に!アタシに歯向かうつもり?!」


ミカも椅子から立ち上がると、俺に喧嘩を売ってくる。

ミカなんて、気が強いだけの、自己中の癖に!!



「ヘナチョコはお前だろ!モンスターすら狩れない、口だけの臆病者が!」


引かない!今の俺は、今までの自分とは違うから!



すると、ハヤトも椅子から立ち上がり、


「二人ともやめろって!ミカも言いすぎだ。マリアに謝ろう?

それと、涼も言いすぎだよ」


仲裁を始めた。

ハヤトだって、いい子ブリッコしているけれど、モンスターを1匹も狩れない臆病者の癖に!!



そうだ。

Clearskyの中で、モンスターを狩っているのは、俺とマリアだけ。

俺達以外なんて、皆臆病者じゃないか!



母親だってそうだ!

俺にだけ偉そうに振舞うけれど、外に出れば、デカイ口なんて叩けない。

それなのに、俺の稼いだ金を根こそぎ奪っていくモンスター!!




「お前達なんて、人の気持ちも考えず、傷つけるだけのモンスターだ!

全員死ねよ!役立たずが!」



そう叫ぶと、走って食堂から出た。

汚い人間の顔なんて見たくない!

もううんざりだ!



食堂を出た後、行く場所なんて自分の部屋しかない。

俺には、ここしか居場所がないんだ。



部屋へ向かう途中、洗濯をしている寮母さんと目が合った。


「あら、涼君、もうご飯食べたの?」


いつもの優しい笑顔で、話しかけてくれる。



「あの!真鍋さんはドコですか?!今すぐ会いたいんです!

話したい事があるんです!」


俺は寮母さんの質問に答えないまま、真鍋さんの行方を問い始めた。

早く会いたい!

もう1円も、母の元へ送りたくないからだ!


しかし、あいにく真鍋さんは会議中で、



「明日、朝一番に涼君の所へ行くよう、伝えるから、今日はゆっくり休みなさい」


用件も聞かず、寮母さんは俺に優しい言葉をかけてくれた。

そんな寮母さんの姿に、俺は涙が出そうだった。


優しい人。

この人が、母さんだったら良かったのに。

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