第46話討伐 2

「もう、ムカついちゃったから、衝動買いしちゃった!」


「・・・・衝動買い?」


どうして、ムカつくと衝動買いに繋がるのか?わからない俺は、思わずその言葉を復唱してしまう。

それが気に障ったミカは、鋭い目つきをすると、



「え?何か文句あるの?」


メンチを切ってきた。



「いや、文句はないけれど・・・。お金あるんだな~って思って」


生まれてから、お小遣いなんて貰った事がない俺は、買い物するといえば、母に頼まれたお使いくらいだ。

自分の好きな物を買うなんて事、考えたこともない。

ミカの行動が理解出来ないのだ。


すると、ミカはバカにしたような顔をしながら、



「え?アンタ、何言ってんの?お金ならあるじゃない!」


まるでお金を好きに使う事が、当たり前のような口ぶりで話した。

お金を好き勝手使える事は、当たり前じゃない。

それは恵まれているって事なのに。



「ないよ、お金なんて。俺持ってないし」


バカにされる。

そう覚悟を決めて話したのだが、ミカの取ったリアクションは・・・



「嘘ついちゃって!どうせ、アタシ達よりガッツリお金貰ってる事はわかってんのよ?

ねぇ?いくら貰ってるの?教えなさいよ!」


何故か、俺がお金持ち設定だ。

どういう事だ?

俺は、誰からお金を貰ってる事になっているんだ?


頭の中は ?? ばかり。


その疑問を打ち破ったのは、ハヤトだった。



「そっか、きっと涼は支給された給料全てを、親に仕送りしているんだろ。

だから、自由に使えるお金がないんだよ、そうだろう?」



え? 今、何って言った・・・?

支給された給料・・・?


もしかして、俺達には給料が支払われていたのか?

その驚愕の事実に、俺は驚いたと同時に、嫌な予感がしていた。


「ねぇ、給料って何?いつから支払われているんだよ!」


俺は立ち上がり、ハヤトに詰め寄る。

それを見ていた、ミカが



「何か急に熱血になって、キモイんですけど・・・」


そう呟いていたけど、そんなの気にしない!

だって、それ所じゃないのだから。



「え?僕達の脳にIDチップを埋め込まれ、入院した日からだよ。

もしかして、知らなかったのかい?

僕達は未成年だから、お金の事は、親に直接真鍋さんが話していると思うけれど・・・・」



その言葉を聞き、鳥肌が立った。

嘘だ・・・・。

今まで、頑張って訓練に耐え続け、支給された金が・・・・。

全て、俺を死へと追いやった母へ流れているというのか・・・・・?



あ!そういえば・・・・!

俺は、ある事を思い出していた。


勝手に脳にIDチップを埋め込まれた時。

最後に会った母がこう言っていた。



「アンタって、本当に可愛くない子だわ。

でも、アンタにしては、お手柄じゃない!


アンタが親孝行出来る子供だとは、思わなかったわ」



アンタにしては、お手柄。

その言葉を、俺は、家から俺が消える事だと思っていた。

それが親孝行になるのだと。



しかし、違っていたんだ。

母が言ったお手柄とは、Clearskyから支給された給料が、そのまま母の元へ流れる。

だから、その事を褒めていたのだ・・・・・。



俺の中で辻褄があった途端、抑えきれない怒りが込み上げてきていた。



許せない・・・・俺の事を邪険に扱っていた母が、俺が稼いだ金を根こそぎ奪うなんて・・・・!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る