第37話アリス 7

「そう、シスターなんて呼ばれていた時もあったわね。

シスターなんて 名 ばかりの、子供達を大量に殺したモンスター」


真鍋は相変らず、ニコニコ笑っている。

私はどうしたらいいのか?わからず、立ち止まっていた。



「マリア!無事で良かった、心配していたのよ?」


シスター達は、この先、何が起こるのか?察しているのだろう。

心にも思っていない事を言い始めた。



「マリア、何しているの?早くモンスターを殺しなさい。

このモンスター達のせいで、何人の貴方の仲間が死んでいったと思うの?」


仲間?

私に仲間なんて、居ないけど・・・・。

居たのは、たった一人の妹、アリスだけよ。




「お願い!マリア!止めて!

貴方の事、面倒見てあげたじゃない!」


必死で命乞いをするシスター達。

私はそれを、白い目で眺めていた。


無様で醜い・・・・、人間の屑だわ。



「人間を平気な顔をして傷つける物こそ、モンスターの正体。

モンスターは人間が落ちていった、成れの果て。


さぁ、マリア、早く殺して頂戴。

貴方の存在理由は、はモンスターを狩る事。

モンスターを狩れない貴方は、生きる意味なんてないわ」



これが、真鍋がやりたかった事か。

ようやくわかった。

この人は、私を人殺しの材料にしたかったのね。


私の存在理由は、モンスターを狩る事じゃないわ。

アリスを守る事よ。

真鍋ったら、何を言っているのかしら?




「こんな奴ら、生かしておいても、また犠牲者を出すだけよ。

思いっきり無残に殺すの。

腕を一本一本引きちぎりなさい。

そうする事で、貴方の 漆黒の翼 が栄養を吸い取る事が出来るわ」



そういう事か。

こいつらを狩れば、私はあんなにたくさんの食事をする必要がなくなる。


育てられた義理なんて何も無い。

私から大切な物を奪ったこいつらが憎い!


骨の髄まで、栄養を吸い取ってやるわ。


私は躊躇する事無く、シスター達を引き裂いた。

漆黒の翼 はシスター達の血をゴクゴク吸い取っていく。


不思議な物で、 漆黒の翼 が血を吸い取れば吸い取る程、力が漲って行った。

これで、あんなに大量の食事をする必要がなくなる。


そう思うと、シスター達がすでに息絶えていても、私は切り刻み続け、血を一滴残らず、吸い尽くした。

それは栄養を吸収する目的もあったけれど、恨みの感情ももしかしたら含まれていたのかも知れない。



シスターと呼ばれた物が、ただの肉の塊になった頃、



パチパチ・・・・。



手を叩く音が聞こえた。

その方向を見ると、真鍋がニッコリ微笑みながら、拍手をし、




「マリア、上出来よ。

これで貴方は、 漆黒の翼操縦者 第一号 になれた。

おめでとう」



私を見ていた。



「嬉しいわ。モンスターを殺す事が出来て、嬉しい。

もっと殺したい。

人の命を脅かすモンスター達を」



その時の感情は、自分でも不思議だった。

嬉しいと口では言ったけれど、心の底から出た言葉ではなく、空っぽの状態。

悲しいとか辛いという物だと、私は思っていたのだけれど、

涙が出る事はなかったから、そちらの感情でもないのかも知れない。


涙を流す事も出来なくなった私は、もはや 人 を 人 とは思う事はないだろう。

私が 人 と思うのはー・・・・。




「今日は疲れたでしょ? 後は自由時間でいいわ。

ゆっくりして! 明日から、どんどんモンスターを狩って貰うから、覚悟してちょうだい」



ニッコリハイテンションの真鍋と別れた後、私が真っ先に向かったのは、自分の部屋。

扉を開け、一目散に駆け寄ったのは、アリスの元。



言葉を話さないアリスに私は必死に語りかけた。




「ねぇ!アリス!

私、モンスターを狩ったの!シスター達を殺したわ!

貴方の事を殺した、あのシスター達よ! 嬉しいでしょ?喜んで!

私、もっと狩るわ! 人を苦しめるモンスターを!

そうすれば、もっと幸せになる人が増えるんだわ!


ねぇ・・・アリスそうでしょ?

私がやろうとしている事、間違えてないよね?

ねぇ・・・・アリス・・・・答えてよ。


私・・・貴方の声が聞きたい。

どんな理由であれ、人を殺した事を・・・・。





貴方に・・・・・、思いっきり、怒られたい・・・・」

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