第22話トレーニング開始 7

「この音は、何ですか?」


不気味に響く、その音が気になって仕方がない俺は、隣でひたすら走り続けるハヤトに再び問いかけた。




「あぁ、これは、きっと マリア が訓練している音だ」



「マリア?」



「僕達よりも、先に漆黒の翼を使い始めた・・・・所謂、実験台になった子だよ。

僕達は腕のみに装着しているけれど、彼女は足についているんだ。


だから、10階建てのビルへジャンプして上がる事なんて、軽く出来る」




「凄いですね・・・・」



「多分、彼女は近々、戦士として、デビューすると思う。

それも、実験的にね」



「そうなんですか・・・」




漆黒の翼を足につけた、女の子・・・か。

どんな子だろう?

見てみたい・・・・興味が湧く。






「そろそろ、30分経つ。一度休憩しようか」



マシンを止めると、ハヤトに連れられ、訓練所を出た。




ガシャン!ガシャン!



まだ、あの音は聞こえる。


マリアは休憩しないのだろうか?




気になる。


彼女の事が。


「休憩は1時間ある。それまでは、ゆっくり食べていいから」



そう言い、座らされた。

目の前のテーブルには、カレーライスに、豚カツが並んでいる。



先ほど消費したエネルギーを補給する・・・って事か。




ハヤトもカレーに手をつけはじめた。

Level.20 で1時間30分走っていたにも関わらず、汗1つかいていない。





「ハヤトさんは、凄いですね。汗を1滴もかいていないんだから」


俺がそう言うと、




「え?それは、冗談かい?」


カレースプーンを持つ、手を止めた。




「え・・あの・・・」


また、アレか。

ハヤトは知っているけれど、俺は知らない事実。



そんな俺をスルーし、




「僕達は、老廃物を流すことは出来ない。

1滴残らず、漆黒の翼に奪われてしまうから・・・・忘れたのかい?」





今まで不思議でならなかった事が、ようやく解決した。


だから、俺は、IDチップを頭に混入したあの日から、

トイレに行きたいと思う事がなかったのか。




なんで、そんな重要な事も、一切、真鍋さんは俺に教えてくれないんだ?





酷すぎる・・・・・。




ここでもやっぱり、俺は 人 にはなれない。

物 のままなんて、嫌だ!!

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