第21話トレーニング開始 6

「僕達が腕につけているコレ、今はただの腕輪だけど、実はもう起動している状態みたいなんだ。

と、言っても、腕輪の方は、動いていない。

動いているのは、脳に埋め込んであるIDチップの方。


脳の中に埋め込んでいる、 核 となるIDチップは、常に少し起動している状態で、

僕達は、チップを埋め込んでいない人間よりも、どの面でも、勝っている。


今、涼君は Level.1 の速度で歩いているけれど、

多分、今、 Level.10 まで速度を上げても、走りきる事は出来ると思う。


今の僕達は、他の人達に比べたら、超人なんだ」




その言葉を聞き、俺はニヤついた。


今の俺は、超人か・・・。


この状態で学校に戻り、100m競争をやれば、余裕で1位が取れる。

体育の授業で活躍出来るし、そんな所を藤井達に見せれば、見直すに違いない。




生まれ変わったんだ・・・・。


今の俺なら、母も俺の事を見てくれるかも・・・・。



色んな考えが、頭を駆け巡る。





「ただし、その超人状態を保つ為には、とてつもないエネルギーが必要になる。

車だって、ガソリンがないと、走らないだろう?


僕達も同じさ。

ただ、僕達はガソリンを飲む訳にはいかない。


僕達に必要な物は何か・・・・わかるね?」




・・・だから、か。



やっと、色んな事が繋がった。


入院してから、病院食とは思えないような、高カロリーは、

常に漆黒の翼が起動しているから、その為だったんだ。




「じゃあ、あの点滴も・・・・」




「そう、あの中身はブドウ糖。

食べ物じゃ、補えないエネルギーを、点滴から、身体に注入していたんだ」




なるほど・・・・。

そういう事か・・・・。



この事を、俺は知らなかったけれど、ハヤトは知っている。



きっと、他にも、もっと俺の知らない事はあるはずだ。


「真鍋さんには、もっと頑張って貰わないと・・・」


相変らず、ハヤトは Level.20 の速度で、話続ける。




「何をですか?」



「僕達が魔王を倒した後の事。漆黒の翼を取り外す方法を」



取り外す?

それは、何故?


これをつけていれば、俺達は、他の奴らよりも、優勢で居られる。

特別な存在で居られるのに?


それをわざわざ取り外すなんて・・・・・、やっぱりこいつは、恵まれた人間。

所謂、勝ち組なんだ。





「そうですね、真鍋さんには頑張って貰わないと」


また、適当に話を合わせる。





本当は、真鍋さんなんて、別に居なくていいだ。

俺は、この施設で、訓練し、生活するのが幸せだから。




そして、再び俺達は、淡々とマシンに向かった。

俺の速度は、Level.1 だから、息も切れなければ、汗も流れない。

しかし、ハヤトは Level.20 の速度で走り続けているのに、汗一つ流していない。


それも、漆黒の翼の力なのだろうか?

だとしたら、俺も Level.20 を走る事が可能なのだろうか?





そんな事を考えていると・・・・



ガシャン!



鉄と鉄がぶつかる音が聞こえた。



ガシャン!ガシャン!



その音は、段々激しくなる。

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