第20話トレーニング開始 5

「今日が訓練初日だから・・・様子見で・・・・」


そう言うと、ハヤトはランニングマシーンを設定する。

その画面にはLevel.1という文字が浮かんでいた。




ゆっくり動き始めるマシン。

その速度は、おじいちゃんおばあちゃんがゆっくり歩くあの速度だった。


こんなに遅い速度で歩くのが訓練?

訓練って、楽勝なんだ。




マシンに足を踏み入れようとした時、



「まずは、この速度を歩き続ける所から始めようか?」



ハヤトのその一言が気になり、足を止めた。

この速度から始める・・・という事は、最終段階では、何処までの速さまで行くのだろうか?



気になる。




「ハヤトさんは、ここで訓練を始めて、どの位経つんですか?」



「1週間前から、ココに来た。

まだ完全に傷が塞がってはいなかったけれど、1日でも早く漆黒の翼を使いこなしたくてね。

無理言って、訓練に参加させて貰っているんだ」



そう言うと、また別のマシンを設定する。

こいつは、所謂リア充って奴なんだ。

日々が充実しているから、早く世界が平和になる為、自分が活躍しようとしている。



ウザイ・・・・。

そう思った。



今アイツが設定している、別のマシンは、ハヤト自身が使う物であり、

ハヤトがどの位のレベルで訓練するのか?気になった俺は、画面を覗き込んだ。




画面に記された文字は、 Level.20 。



その文字に、息を飲む。



たった1週間、俺より訓練を早く始めたこいつが、もう Level.20 に挑戦しているだって?



ありえない。



バカだろ?こいつ。



っていうか、俺が Level.1 なんて、低すぎるんだ。


こいつは、俺を舐めている。



見返してやる。



俺は、勢いよく、マシンに乗ると、歩き始めた。


マシンを使い始めてから、1時間が経った。



14歳の俺にしてみたら、Level.1 なんて楽勝。

息を切らすどころか、汗もかかずに、淡々と歩き続けている。




隣のハヤトは・・・・というと、

100mを全力疾走するようなスピードで、息を切らす事なく、走り続けていた。



なんなんだ、コイツ?

なんで、こんなに体力が有り余っているんだ?!





「あの・・・・、ハヤトさん」



「どうした?休みたい?」



「いえ、違います。辛くないんですか?」



俺は、聞いてみる事にした。





「辛い?大丈夫だよ」



走りながらも、笑顔で答える。




「息、全然切らさないんですね」



「あぁ、漆黒の翼が少し起動しているからね。

涼君の方も、後1時間くらいで限界が来るだろうから、残り30分走ったら、食事休憩にしようか」



サラリと、俺の知らない事を話すハヤト。


漆黒の翼が起動?

限界? ナンダソレ?




「漆黒の翼が起動しているって、何ですか?」



「あぁ、あれ?真鍋さんから聞いてない?」




ー・・・・真鍋さん。

また、あの人か。



俺には話していないけれど、ハヤトには話してるって事は、俺よりもハヤトの方が、将来有望だから・・・か?




「いや、聞いたような・・・・忘れちゃいました。

漆黒の翼の起動って、何でしたっけ?」



まるで、その話を忘れたか?のように、聞き出す事にした。

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