第19話トレーニング開始 4



「最後に、ココが訓練をする場所。トレーニングルームよ」



一番奥にある、一番大きな扉。

そこを開けると、想像を絶する光景がそこにはあった。




学校の体育館とは比べ物にはならない広さ。

プロレスで使っている、大きなマットみたいなのもあれば、

鉄で作られたアスレチックの数々もある。





「あそこら辺にあるのは、まだ涼君には早いわね。

まずは、漆黒の翼に耐えれるような身体を作る所から始めないと・・・」



話の途中で、左右を見渡す真鍋さん。

何かを見つけたようで・・・。




「あ!丁度、ハヤト君が筋トレしているから、涼君も一緒に鍛えましょうか。

今の状態で、漆黒の翼を起動させたら、右腕が吹っ飛んでしまうしね」



ニッコリ笑いながら、平気な顔で残酷な事を、サラリと言う真鍋さん。


その無邪気な言動や行動の1つ1つが、俺を少しずつ傷つけている・・・・なんて、

どうせ、この人は考えないんだろうな・・・・。





「ハヤト君!こっちに来て!」


真鍋さんの声に、ランニングマシーンで走りこんでいたハヤトは、

こちらを確認すると、マシンを止め、こちらに走ってきた。




「あぁ、涼君。久しぶり」



あれだけ走りこんでいたにも関わらず、ハヤトの顔には汗1つ流れていなかった。




「あれ?紹介した事あったっけ?」



「いえ、以前、病院の廊下で会ったんです」



「へぇ~、そうなんだ。じゃあ、話は早いわね。

今日から、涼君訓練デビューなの。

訓練のやり方教えてあげてくれるかしら?」



「わかりました」



ハヤトと真鍋さんは、淡々と話す。

それは、俺と真鍋さんが会話する時も同じ現象で、

真鍋さんは、ハヤトにも興味無いみたいだ。


「真鍋さん、忙しいんじゃないですか?

涼君は僕に任せて、もう行っていいですよ」



「あら、そう?じゃあ、後はよろしくね。

涼君、頑張って」



俺の肩をポンっと叩くと、真鍋さんは、アッサリ訓練施設から、出て行った。


訓練初日なのに・・・・、無責任すぎる。

いや、あんな人に怒るだけ、無駄か。


俺の事なんて、興味がないっていうのが、見え見えだし・・・。





「涼君、こっち!まずは、足の筋肉を鍛える所から始めよう」


こちらに手招きしながら、トレーニングマシンへ歩くハヤト。



「はい」


従うしかない、俺。



家では、母の下僕。

学校では、石川、藤井、志田の下僕。



そして、ココでは、ハヤトの下僕になるのか・・・。





「真鍋さん、いつも忙しそうですよね」



それは、俺の身体に勝手に異物を混入したにも関わらず、放置する真鍋さんに対しての嫌味だった。

しかし、ハヤトはそうは思っていないようで・・・・




「あの人は凄い人だよ。こんな兵器を開発するなんてね」



真鍋さんを尊敬している様子。



ハヤトといえば、長身に整った顔。

やや髪の毛は長いにも関わらず、清潔感溢れる見た目。

そして、何より、頭が良さそうな顔をしている。

きっと、いい所のお坊ちゃんに違いない。




出来の良い子は、同じ匂いのする真鍋さんを尊敬する・・・・って奴か。



「そうですね、凄い人ですよ」



思ってもいない事を口にした。

なんとなく、意見を合わせた方が良い気がしたから。



自分の意思を持てば、潰される。

全て周りと同じにすればいい。


そうすれば、目立たなく、潰される杭にはならないだろうから。

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