第18話トレーニング開始 3
真鍋さんが暴走をしている間に、車は大きな塀に囲まれた場所へと入っていく。
その塀は、刑務所よりも高く、空へと伸びていた。
・・・逃げるのを、阻止しようという魂胆だろうか?
建物の中に、車が入ると、シャッターが降りた。
空の下を歩けると思ったのに、外の空気を吸えないままか。
少し残念に思う。
「ここがこれから涼君が住む所よ」
そう言うと、真鍋さんは車から降りた。
俺も、急いで車から降りる。
エレベーターへ乗り込むと、真鍋さんはIDカードを出し、何やら操作をする。
「ここはね、機密機関だから、色々厳しいのよ」
「そうなんですか」
「あれ?驚かないの?初めてココに連れて来た子は、皆驚くのよ~」
そう言い、笑う真鍋さん。
何かに押さえつけられ、身動きが取れない生活か。
俺は生まれた時から、自由のない生活を送ってきた。
色んな物から、踏みつけられる日々。
今更、そんな生活に驚く必要なんてないんだ。
やがて、エレベーターは止まった。
開くドア。
ココが何階なのか?は、わからない。
○○階と、表示されていないから。
真鍋さんは、ココが何階なのか?は知っているのだろう。
でも、俺に教える様子はない。
なんとなく、これまでの真鍋さんの行動で、俺は自分の立ち位置を理解する事が出来た。
「降りて、このフロアが涼君が、生活と訓練をする場所よ」
長い廊下に、たくさんのドア。
ここに、俺の生活する全てが存在しているのだろう。
俺は、このフロアから自由に出入りする事が出来ない。
きっと、そういう事なんだと理解した。
「ここが、涼君が住む部屋。
中には、ベッドに机、クローゼットがあるわ」
「はい」
「で、ココが食堂。
食事のメニューは、栄養士さんがしっかり管理しているから、
好き嫌いしないで、しっかり食べないとダメよ」
「はい」
「で、ココが浴室・・・・・ふっ」
フロア内を真鍋さんが1つ1つ丁寧に案内してくれた。
そして、浴室に差し掛かった時、突然彼女は噴出し、笑い始めたのだ。
「どうしたんですか?」
「さっきから、涼君ったら、 はい しか言わない・・・ふっふ・・・」
素直に返事をする事は、イケナイ事だろうか?
今まで出会ってきた奴らは、皆俺が返事をしたら、
「声が小さい」だの「聞こえない」だの、文句をつけられた。
それに比べたら、相手に返事がしっかり聞こえた事は、良い事に思えるのだが・・・・真鍋さんは違うみたいだ。
「私の親友に似てるのよ。
それを思い出しちゃったの。ごめんね、悪く思わないで」
親友。
俺には友達すら一人も居ないのに、真鍋さんには、居る・・・・んだ。
「いいんです。次行きましょう」
友達の話なんてしたくない。
俺は先を急かす。
「そっか、じゃあ次は・・・・」
何事も無かったかのように、再びフロア案内は続いた。
真鍋さんって、俺に本当に興味がないんだね。
俺の話題に関して、深く突っ込もうとしない。
やはり、俺は、ただの道具だからか。
確信に一歩繋がる。
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