第17話トレーニング開始 2
1階で真鍋さんが待ってるって言っていたけれど・・・。
それらしき人は居ない。
いつも誰も部屋で一人ぼっちだから、
たくさんの人が慌しく動きまわっているココは、少し気後れしてしまう。
隅の方に空いているイスを見つけて、そこに座った。
とりあえず、ココの雰囲気に慣れてからじゃないと、真鍋さんを探すのは無理みたいだ。
大きな1階フロア。
受付、会計というプレートが窓口に貼ってあり、名前を呼ばれた人が、そこに向かう。
どうやら、ココは、実在する総合病院らしい。
俺が入院していた場所には、一般で入院している患者は居なかったから、
特別病棟か何かだったのだろうか?
あそこで出会ったのは、看護士と真鍋さんを抜かすと、ハヤトと名乗った人、ただ一人だけ。
ハヤトはもう、退院したのだろうか?
出入り口を観察していると、病院には不釣合いな格好をした女性が入ってきた。
真鍋さんだ。
誰かを探しているのか?左右をしきりにキョロキョロ見渡す。
「おはようございます」
傍に駆け寄ると、
「あら、おはよう。遅くなってごめんね。
じゃあ、これから涼君が暮らす場所へ、行きましょうか。
ん?荷物は?」
俺の周りを何かを探すように、キョロキョロ探す真鍋さん。
俺には、手荷物なんて1個も無いんだよ。
誰もお見舞いにも来ていないんだから。
「荷物はないです」
こんな返答をしたら、真鍋さんはどう思うのだろうか?
少し興味が沸いたけれど、
「そっか。じゃあ、行こうか!」
期待はずれの素っ気無い返しだった。
そのまま、手ぶらの俺と真鍋さんは、出入り口前に駐車してある車に乗る。
俺達が乗り込むと、無言で車は発進した。
静まり返った車。
運転手さんは、黙々と車を運転し、真鍋さんは、隣で資料の束を読んでいる。
暇な俺は、窓の景色を眺めるしかなかった。
綺麗な空。
これから向かう場所で、俺は、朝が来る事を、また嫌う日々になるのだろうか?
「あの・・・、真鍋さん」
「なに?」
資料から目を離す事なく、返事をする。
「これから向かう場所で、俺は何をしたらいいんですか?」
「訓練よ。腕に付いている、漆黒の翼を自由に扱えるように頑張るの」
「自由に扱えるようになったら、どうするんですか?」
「自由に扱えるようになったら、外の世界で、私達の生活を脅かすモンスターを退治して貰うわ」
「外の世界って何処ですか?モンスターは、何処に居るんですか?」
真鍋さんは、顔を上げ、こちらをジっと見た。
聞いてはいけない事を聞いてしまったのではないだろうか?
心臓がドキドキする。
「モンスターは、そこら辺に居るわよ。涼君は見た事ない?」
「俺は・・・ないです」
「そっか。私はたくさんモンスターを見てきたわ。
もうね・・・・モンスターが許せないの私。
モンスターを撲滅したい一心で、研究を続けたわ。
そして、涼君達に出会えた。
これは、運命だ・・・そう思ったの」
また、始まった、真鍋さんの暴走。
いつもそうだ。
自分の世界に入り、ベラベラ喋り続ける、あの癖。
あれは、なんだろう?
真鍋さんの話よりも、癖の方が気になる。
なんか、真鍋さんって、変わってる。
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