第14話異物混入 7
「まだ僕達の仲間が居るんですか?」
「あぁ、居るよ。
僕と君は、きっと同じくらいに、チップを埋め込まれたのだろうね。
それと、テスト用チップを埋め込まれた子に、
1週間前くらいに、ココに来た子。
現在は4人。
僕達はまだだけど、先にチップを埋め込まれた子は、
もう訓練に入っているらしい。
僕も、訓練をするのが、待ち遠しいよ」
そう言うと、彼は微笑んだ。
待ち遠しい?何故だろう?
・・・そうか、彼は英雄になりたいんだ。
その余裕のある笑顔と発言からして、
彼は、恵まれた環境で生まれ、育ったのだろう。
だから、魔王が居なくなり、世界が平和になる事が皆の幸せだという考えを持っているはず。
俺みたいな、学校や家で苦しんでいる人間の事なんて、
きっと、彼は、理解しないタイプだろう。
そんな彼と会話をする事が苦しくなった俺は、
「俺も訓練が楽しみです。じゃあ、これで・・・」
自分の部屋に戻ろうとすると、
「僕は、ハヤト。君の名前は・・・・」
呼び止められた。
「俺の名前は、涼です。北条涼」
そう言い、軽く会釈をすると、急いで部屋に入る。
「涼君、よろしー・・・」
彼のー・・・・、ハヤトの声が聞こえていたけれど、俺は構わず扉を閉めた。
関わりたくない。
どうせ、また・・・・・イジメられるに決まってる。
アイツも、ハヤトも、藤井や石川達と、変わらないんだ。
更に月日は流れた。
相変らず、お見舞いには、誰も来ない。
真鍋さんも、他の子の相手をするのが精一杯で、
俺の所に来る事はなかった。
家族はー・・・言うまでもない。
変わった事と言えば、
一日3回食事が配給されるようになった。
メニューは、朝からステーキ、牛丼などの高カロリー食品ばかり。
俺みたいな入院患者なんて、1日ベッドの上で寝てるくらいしか、やる事がないのに、
1日の摂取して良いカロリーを完全に無視だ。
そして、不思議な事に、あれだけ色んな物を食べているというのに、
ここに入院して以来、一度もトイレには行っていないのだ。
偏った食生活により、便秘にでもなったのか?と思い、
点滴を取替えに来た看護士に声をかけた。
「あぁ、それは大丈夫よ。あれ?真鍋さんから聞いてないの?」
驚いた表情をする看護士。
真鍋さんは・・・・・僕の所には、ずっと来ていない。
もしかして、真鍋さんは重要な事を俺に言い忘れているのではないだろうか?
重要な事を言い忘れるという事は、真鍋さんにとって、俺は、価値がないからだろう。
自分の立場を理解した、俺は、
「え?あぁ、聞いてました!すいません、忘れてました」
聞いていたフリをした。
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