第13話異物混入 6
誰も居ない。
静まり返った廊下は、やはり、白一色に染まっていた。
なんで、この施設は、白ばかりを使うのだろう。
少し笑えてくる。
廊下の上半分は、窓になっており、綺麗な青空が広がっていた。
いつも、空に太陽が昇っている時間帯は、学校に行かなくてはならないから、見るのが嫌だったけれど、
学校へ行かなくて良いとなった今、
その澄んだ青空を見ているだけで、とても幸せな気分になった。
青空の下を歩いてみたい。
そんな事さえ、思う。
外に出るといっても、やる事が無かった俺は、ずっと青空を見続けていた。
ガラス越しではあるけれど、いつか、本物の空を見る日を思いながら。
・・・・ガラガラ・・・・。
扉が開く音が聞こえた。
誰かが、部屋から出てきたのかな?
音が鳴った方向に目をやると、俺より少し年上くらいの男性が、
点滴の補助器を押しながら、部屋から出てきた。
目が合う。
なんとなく、気まずくなり、会釈をすると、相手も会釈をし返す。
・・・・・。
妙な間。
それが、たまらなくなった俺は、再び視線を外へと戻した。
ペタペタ・・・・。
スリッパが床にこすれる音が聞こえる。
さっき部屋から出てきた男性が、歩いているようだ。
その音は近くで止まる。
男性は、俺の2m手前辺りで止まると、同じく外を見始めた。
「・・・・君の右腕」
「はい?!」
突然話しかけられ、俺は思わず驚く。
男性の方を見ると、俺を見ていて、やはり俺に話しかけたみたいだ。
学校では、誰にも話しかけられた事なんてなかったから・・・・。
戸惑っていると、男性は、両手を俺の前に伸ばすと、
「僕の腕にもある。君は右腕のみみたいだけど、僕は両腕だ」
確かに・・・・。
彼の両腕には、俺と同じ形の腕輪がしっかりくっ付いていた。
という事は、俺と同じ境遇にあるという事だ!
「じゃあ、貴方も頭の中にIDチップを埋め込まれたんですか?」
こいつが、真鍋さんが言っていた、俺の代わりになる人物か?
それを悲しいとも思えたけれど、
ただでさえ、不思議な境遇に居る自分の気持ちを分かち合える人物に出会え、テンションが上がる。
「あぁ、僕の頭にもIDチップが入っているよ。
君も、そうみたいだね」
彼も、仲間を見つけた事に安心したのか?少し微笑んだ。
「でも、こんなの勝手に頭の中に入れちゃって、大丈夫なのでしょうか?
爆発とかしないんですかね?」
外れた発言だと、自分では思わなかったのだけれど、
俺の言った言葉を聞き、彼は笑いながら・・・・
「大丈夫。それはないと思う。
何度もテストを重ね、先にチップを埋め込んだ子が、
無事に漆黒の翼の操作に成功したって、ニュースで見た。
僕達のIDチップがバグるとしたら、その前にその子のチップがバグるから」
・・・それを聞いて、喜んでいいのか?微妙だな・・・。
複雑な心境だ。
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